○…サッカーのワールドカップ(W杯)日本初戦の逆転負けに、12日前に行われたドイツとの親善試合を思った。開催国でもある強豪相手に2点を先制し、追い付かれての引き分け。日本国内はもとより、現地メディアも「日本の善戦」を伝えた。しかし、開幕直前の実戦は具体的な戦術の徹底もさることながら、「勝ち点」を意識した戦い方にも大きな意味があった。勝てば「3点」、引き分け「1点」、もちろん負ければ「ゼロ」。日本の1次リーグF組はブラジルの実力が抜きん出ているだけに、事実上、日本を含む残り3カ国による決勝トーナメント1枠争いと考えられ、勝ち点争いはし烈といわれた。開幕直前のドイツ戦で学んだ「勝ち点2を失う経験」を生かせなかったことが残念でならない。
○…決定力不足は言い古された観がある。なかなかシュートが枠に飛ばないという事実。GKのファインセーブや、ポストやバーに嫌われてこそ「惜しいシュート」なのだ。今回の日本の先制点のように「運」「不運」もあるが、あくまでも得点確率の分母は「ゴール枠内」である。厳しいせめぎ合いの中、「世界」は枠をとらえる。では、W杯代表国として、「世界基準」における技術不足のそしりは免れないのか。組織とスピードを武器にする日本だけに、決定機に至るまでの連係は世界基準に達している。県勢ゆえにあえて厳しく言えば、だからこそフリーの状態で放った前半先制機の高原直泰選手、後半加点機の福西崇史選手のシュートは、せめて枠をとらえてほしかったのだ。
○…「体格に勝る海外選手を相手に、気後れせず前に出る。その勇気を持つことで、相手のファウルを誘うこともある」。大会前にGKの川口能活選手は語っていた。その言葉通り、何度となく空中戦で体を寄せ、至近距離のシュートにも「守護神」ぶりを発揮した。同点弾を許した場面の飛び出しは、警戒すべき長身ケネディ選手への瞬時の反応である。味方選手と重なったのは結果論であって、選択に間違いはなかった。ロスタイムを含めた2分間で許した勝ち越し点とダメ押し点。攻撃と守備の両輪は、両刃の剣でもある。決定機に1点が奪えず、無意識のうちに守備のリズムが狂う。日本W杯史上最多の3失点。自責の念は大きいだろうが、いとも簡単に1対1の局面にさらされては、さすがの守護神でも極めて難しい。
○…中継画面を埋めたスタンドの青。大挙、海を渡ったサポーターの数は「世界基準」だった。開催地はアウエーでも、試合はホーム。試合後、高原選手は真っ先にスタンドに拍手を送った。前回大会は直前の病気で代表を逃した。後押しへの感謝とともに、自らへの鼓舞にも思えた。3大会連続出場ながら前回はピッチに立てなかった川口選手は、残り10分間で自身のW杯初勝利が手のひらからこぼれ落ちた。そして、何より、後半11分、坪井慶介選手の負傷で茂庭照幸選手が投入された時、直前で代表を故障離脱した田中誠選手が、どこで、どんな気持ちで見つめているのかと思い、胸が熱くなった。スタンドの思い、深夜の列島で祈った国民の思い、選手それぞれの思いがある。
○…クロアチアとの第2戦は、日本時間の18日午後10時開始。日本が初出場した98年フランス大会に続き、クロアチアとは1次リーグ2戦目で対戦する。今回同様に初戦黒星で迎えた98年は、連敗で1次リーグ敗退を決定付けられた因縁もある。8年間の日本サッカーの軌跡を背負った再戦であり、試合にかける選手の思いが「世界基準」であることを見せるべき90分間となる。決勝トーナメント進出うんぬんではない。星勘定での「勝ち点3」奪取でもない。ドイツW杯で日本が何を残すのか、何を残すことができるかの戦いである。
(6/13 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。