○…高校野球静岡大会は21日再開され、2回戦が始まる。55校の笑顔と55校の涙が10球場を包んだ1回戦。実力に点差ほどの開きはなかったろうが、22試合がコールドゲームとなった。3年生は高校「最後の大会」であり、下級生には先輩とプレーできる「最後の大会」である。ちょっとした動揺が傷口を広げてしまうことも、普段以上の力や結束を発揮することも、“夏の魔力”だろう。
○…大会は創部3年目の静岡大成と古豪静岡商の好ゲームで幕を開けた。静岡商が9回決勝スクイズで今春市内大会の雪辱を果たしたが、静岡大成の牧野投手と静岡商4番の稲口選手による静岡服織中同期対決にも心中を察しながら見入った。そんな見方も夏の楽しみのひとつだ。好ゲームといえば、浜松商-常葉菊川も1回戦屈指の好カードの前評判に恥じない内容だった。粘りの浜商健在を見せ付けた3回の集中力は、浜商センバツ優勝監督でもある敵将の磯部監督をして「さすが」と言わしめた。
○…東海大翔洋と国際開洋一も戦前の予想をはるかに上回る接戦となった。東海大翔洋の右腕鈴木投手の毎回の16奪三振も素晴らしかったが、その好投に対して1点差に迫った国際開洋一の最終回3得点の粘りは称賛に値する。タイからの留学生スティキアットブンナム選手のはつらつとしたプレーも、さわやかな印象を与えた。
○…来年にけん土重来を誓う涙もあれば、長泉のように2年後の移転・改編を控え、来年の存続が危ぶまれる中での涙もあった。本年度から新入生を迎え入れておらず、2年生部員は4人。在校生から新入部員を募るか、他校と合同チームを編成しなければ、来年の出場はかなわない。創部5年目の1989年にはノーシードで準優勝した鮮やかな青いユニホームが、来夏も見られることを何とか願わずにはいられない。
○…飛龍の白岩選手の苗字も懐かしかった。02年に屈指の好投手と注目された亮介選手の弟。先頭打者本塁打を運ぶと、2打席連続アーチでコールド発進をけん引。藤枝高洲中で全国準優勝投手となった亮介選手をはじめ、同校の03年主将の勇人選手、04年主将の真選手と、甲子園の土は踏めなかった兄たちの夢も乗せ、さらなる活躍に期待が掛かる。
○…男女共学化で初陣となった1年生チームの浜松市立は、4投手が12死四球を与えるコールド負けでホロ苦いスタートとなった。エースがけがで登板回避というハンディもあったが、半年前までは中学生だった彼らが得た経験は、浜市野球部史の幕開けであり、同一メンバーで臨む秋以降に大きな財産となるはずだ。長い女子校時代を経て野球部復活3年目、吉原50年ぶりの夏白星も特筆される。「Y」の字を大きく前面に入れた斬新なユニホームが誇らしげに見えた。
○…昨年準優勝の富士宮北と2年連続ベスト4の常葉橘の初戦敗退もあった。富士宮北を逆転の1点差で振り切った磐田南は1年生エースを軸に3安打で守り勝ち、常葉橘を撃破した掛川東は被安打10にも13残塁と要所を締めて逆転勝ちした。2回戦からはシード8校とノーシード不戦勝の富岳館が登場。磐田南は第5シード浜名に、掛川東は第4シード静岡市立に挑む。
○…シード8校のカードのうち4試合は、初戦で1点差の接戦を制した相手との対戦になる。逆転で2回戦にこまを進めた相手も4校に上る。1試合を戦った自信としのぎ切った勢いは、シード校といえども侮れない。抜きん出た優勝候補が不在といわれる混戦大会だけに、波乱の2回戦が待つのか。春の実力校が甲子園を視野に入れた安定した戦いを見せるのか。球音の再開が待ち遠しい。
(7/19 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。