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2006年「スポーツコラムだんまく」

白球の夏にかく記者の汗

2006/07/24

 ○…高校野球の地方大会取材は報道機関の新人にとって、最初の記者試験のようなものだ。ゲームを追いながらスコアブックをつけ、シャッターチャンスとみればカメラを構える。攻守交代のわずかな時間を縫って、バックネット裏の記者室からスタンドに移動し、応援席で話を聞く。その間もスコアブックの記入は欠かせない。片方の耳で話を聞き、片方の耳で球音を気にする。吹き出る汗は冷や汗だったりもする。

 

 ○…試合後の選手や監督への取材では、スコアブックを見ながらゲームを振り返り、限られた時間の中で取材ポイントを要約していく。注目のカード、注目の選手となれば、新聞、テレビの取材が殺到する。いかに他社の記者の質問に惑わされず、時間の無駄を省き、要点を絞るか。心情を測りながらも、決してもらい泣きなどせず、客観的な立場を忘れない。記者の主戦場であり、真価が問われる時でもある。

 

 ○…静岡大会は一般紙6社、スポーツ紙3社、テレビ局5社が日参する。試合後の取材焦点、いわゆる聞きどころは記者間で一致するが、それでも唐突な質問が飛び出ることも少なくない。試合の流れに沿った内容でなく、基本的な情報に関する場合が大半だ。貴重な時間を奪う質問に、気の荒い記者ならば一喝することもあろうが、それも高校生の前で大人げないと思えば、「無駄な時間」が過ぎるのを待つしかない。

 

 ○…ベテラン記者ともなると、早めに選手を「つかまえて」話を聞いてしまう。一方で、体が冷えないようにと汗をふき取るのを促し、敗戦の消沈が落ち着くまで質問を控える。しかし、現場に慣れない若手の多くは、おっとり刀で駆け付け、乗り遅れまいといきなり質問を切り出す。言葉をしぼり出すほかない球児から、「臨場感あふれるコメントが取れた」と喜ぶとしたら、取材対象や周囲に対する配慮に欠けた記者として行く末が不安に思えることもある。

 

 ○…高校野球取材が若手の登竜門といわれる理由はここら辺にある。予定調和でないドラマ性、汗と涙に彩られた人間臭さ…。状況に応じて記事にする内容を時々刻々変更し、歓喜あり、号泣ありの物語の主人公を思いやりながら、なおかつテキパキと取材を進め、的確に記事にしていく。その手法や姿勢は、事件や事故、町ネタを取材していくに当たっても、心掛けるべき要素が詰まっている。

 

 ○…昼時ともなると「弁当(伝統)の一戦」の駄ジャレを連発した某紙支局長。球児と同じ空気が吸いたいと、記者室の窓を常に全開にした先輩記者。監督のさい配を厳しく指摘した理論派記者-。多くの名物記者は、球場を離れて、いわゆる「社会ネタ」を書かせても秀逸だった。今夏は天候不順で、なかなかセミしぐれの中の熱戦とはいかないが、球児の汗と同様に、記者の汗もまた球場に染み込んでいく。

(7/24 掛井 一也)

 

 「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。




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