○…兵庫県内で国体の熱戦が始まった。夏季大会と秋季大会が初めて一本化された大会で、陸上少年女子短距離の中村宝子選手(浜松西高3年)の走りに注目したい。8月の全国高校総体200メートルで日本歴代3位となる23秒48のジュニア日本記録・高校記録を樹立した。9月の群馬リレーカーニバルでは日本記録保持者の信岡紗希重選手(ミズノ)が体調不良で欠場したとはいえ、向かい風1・3メートルの中で23秒台をマークし、社会人選手を抑えて堂々の優勝。12月にカタール・ドーハで開かれるアジア大会代表の座も射止めた。
○…高校総体200メートルは1年で6位、2年で3位、最終学年の大会で頂点を極めた。筆者がスポーツ取材の現場を離れてから現れた逸材だが、中村選手を見続ける先輩記者によれば、とにかく笑顔が素敵なアスリートだという。フィニッシュラインを越え、表彰台に上がり、囲み取材を受け…、常に真っ白な歯を見せて笑顔を絶やさない。明るくすがすがしい性格は紙面を飾る写真を通じて十分に伝わってくる。161センチと決して大きくない体格は、競技を楽しんでいる姿と結果の存在感で「でかく」見える。
○…県内高校生がアジア大会に出場するのは、48年ぶり2人目、トラック競技では初の快挙だ。従来の高校記録を大幅に更新した高校総体での新記録樹立にも、「優勝のことだけ考えていた結果として記録もついてきた」と冷静だった中村選手。身長がない分、大きな走りを心掛けるとともに、生来の強いキック力で脚が流れないようよう、体の前で脚を動かす感覚も意識しているという。凡人には計り知れない境地だが、くったくのない語り口に接すると、いとも簡単なことのようにさえ錯覚してしまう。「まだまだ走りも精神的にも荒削り。その分、成長の余地があるということ」。筒井計臣顧問の言葉を聞けば、どこまで記録を伸ばすのだろうかと期待せずにはいられない。
○…国体陸上競技は6日から始まる。中村選手は100メートルと400メートルリレーに出場を予定し、リレーでは目標であり、あこがれでもある池田久美子選手(スズキ)とチームを組む。アジア大会代表の県勢“共演”だ。総体から12日後の世界ジュニア(北京)200メートルは準決勝で敗退した。ドーハでのアジアトップクラスとの戦いは、今の自分に足りているもの、足りていないものを体感する舞台であり、進学後の競技生活、そして五輪代表の夢を見据えた加速の場でもある。「子は宝」から宝子と名付けられた本県陸上界の「宝の子」。高校最後の国内大会となる兵庫国体で、どんな笑顔を紙面に飾ってくれるのか、楽しみに待ちたい。
(10/2 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。