○…3年以上前になる。アテネ五輪女子ソフトボール日本代表に選ばれた佐藤由希選手が母校の藤枝順心高を訪問した時のこと。同校初の快挙に沸く中で学校関係者が言った。「次(の北京五輪)はサッカー部も楽しみですよ」。夢と希望を託した言葉は、現実になるかもしれない、そんな思いに今かられている。先日行われた全日本女子サッカー選手権の東海予選。藤枝順心高は相次いでクラブチームを撃破し、初の本大会出場を決めた。今夏の全日本高校女子サッカー日本一に続く吉報に、2年後に迫った北京五輪のOG日本代表を期待してしまうのは尚早だろうか。
○…東海予選では社会人や学生中心の“お姉さん格”チームを相手に、2試合7得点1失点で優勝し、天皇杯サッカーの女性版といわれる12月開幕の本大会出場に花を添えた。静岡県女子サッカーはかつて、清水第八クラブが全日本選手権7連覇の偉業を達成。Lリーグ(なでしこリーグ)の前身となった日本女子サッカーリーグ発足後は、清水FCレディース(その後、鈴与清水FCレディースに改組)が活躍した。第1回リーグ制覇を果たしたほか、清水第八から移籍の木岡二葉選手、半田悦子選手をはじめ、山口小百合選手、長峰かおり選手、泉美幸選手ら女子ワ-ルドカップ(W杯)やアトランタ五輪の日本代表を輩出した。
○…鈴与清水FCは2000年に解散し、清水第八クはLリーグ2部に戦いの場を移した。女子日本代表「なでしこジャパン」に久しく静岡県勢の名前が挙がらない寂しさを感じている中、高校日本一に続く藤枝順心高の「栄冠」は明るい未来を予感させる。初戦で伊賀FCフロイライン(三重)に2-1、決勝は昨年初戦で屈した名古屋FCレディース(愛知)を5-0と、まさに一蹴(しゅう)した。多々良和之監督は「勝負強さ」を勝因に挙げた。今季公式戦負けなし。勝負強さは全日本高校選手権の決勝トーナメント1回戦が象徴した。
○…3連覇を狙う神村学園(鹿児島)に延長戦の末、PK戦で勝利。過去3年連続の決勝トーナメント進出の初戦で鹿児島県勢に屈した雪辱を果たすと、決勝では3年連続準優勝の常盤木(宮城)を下した。磐田市開催3年目を迎えた高校最高峰の大会で初優勝した実力は全日本選手権予選でもいかんなく発揮され、県大会決勝敗退の一昨年、東海初戦敗退の昨年を経て「1歩ずつ前進して3年越しの全国切符を得た」(多々良監督)。
○…高校チャンピオンとして来年1月の全日本ユース選手権は予選免除で出場する。Lリーグチームとの対戦が予想される全日本選手権で勝ち進むのは容易でないが、「全日本ユースの調整試合として、また長い目で見たチームの足りないところを再確認できれば」と指揮官。あえて「長い目」を強調するのは、2008年U-17W杯を目指すU-15日本代表候補の9月合宿に若林亜里佐選手(1年)、10月合宿には中等部の高畑結選手(2年)が選ばれるなど、下級生に有望選手がひしめき、来年度以降も全国的な活躍が期待できるからだろう。
○…静岡県からは昨年度、U-19代表候補合宿に藤枝順心高の杉山紫乃選手(現Lリーグ1部・岡山湯郷Belle)と桑原沙緒莉選手(清水第八ク)が、U-17代表に高塚千晴(桐陽高)が招集された。本年度は前記の藤枝順心勢のほか、常葉橘中の杉山貴子選手、石田みなみ選手、磯部佳月選手、富士宮四中の渡井汐莉選手がU-15代表候補合宿に参加した。「なでしこジャパン」の芽は確実に育っている。
○…「3年前のアテネ五輪の年といえば、ようやく県のタイトルが取れるようになったころですね」と振り返る多々良監督。小学生対象のスクールを開講して3年、中等部にU-15チームを編成して2年。「クラブチームはどうしても試合中心になってしまう」。育成・強化に照準を置いた成果が今後も花を咲かせていくことだろう。
(11/2 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。