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2006年「スポーツコラムだんまく」

池田選手らに児童感たん

2006/11/14

 ○…国内トップアスリート自らが子供たちに陸上の楽しさを伝えようと企画した「キッズアスリート・プロジェクト」(日本陸連共催)が始まった。1回目は東京・杉並の区立小学校の校庭で行われ、発案者で05年世界選手権男子400メートル障害銅メダリストの為末大選手(AFP)ら日本記録保持者がトップレベルの“妙技”を披露した。テレビ画面に映った児童の顔は驚きと感動にあふれ、実技指導に当たった選手もさわやかな笑顔が印象的だった。


 ○…男子100メートル日本記録保持者の朝原宣治選手(大阪ガス)はゴール後、校庭フェンス前に置かれたマットに激しく突っ込むほどの「本気」で臨んだ。男子棒高跳び日本記録保持者の沢野大地選手(ニシスポーツ)は5メートルの跳躍を披露した。高校生レベルの高さとはいえ、校舎2階に相当する跳躍に児童は大はしゃぎ。女子走り幅跳び日本記録保持者の池田久美子選手(スズキ)は得意の障害競技で同走女児の歩幅に合わせた優しいハードリングを見せ、05年日本選手権やり投げ優勝の村上幸史選手(スズキ)も参加した。


 ○…幼少期に出合った陸上への純粋な興味、世界で戦うまでに成長を続けられた魅力を伝え、「いずれ47都道府県すべて回りたい」と為末選手。「はやーい」「すごーい」「信じられない」。児童が思わず口にした言葉は純粋無垢(むく)だ。目の前で繰り広げられた“驚がく”の実力とは裏腹に、見慣れた校庭が舞台という身近さも相まったはずだ。選手は給食も共にしたという。「みんなが感動してくれて、刺激にもなった」という為末選手や、「ちゃんと跳べてよかった。試合より緊張したかも」という沢野選手の言葉は、選手自身も初心に戻るいい機会となったに違いない。


 ○…ニュース映像を見ながら、ふと思った。競技種目や所属の枠を超え、アスリートの純粋な気持ちが一つになった今回の企画に、あらためて今年8月に亡くなった女子砲丸投げ日本記録保持者の森千夏さん(元スズキ、享年26歳)のことを思った。難病と闘う森さんを励まそうと母校東京高校が始めた支援活動に、選手の側も素早く呼応した。中心となったのは、やはり為末選手だった。もちろんチームメートの池田選手や村上選手も先頭に立ち、闘病生活の募金活動に精をそそいだ。

 

 ○…キッズプロジェクトは選手間で1年近い話し合いを続けて実現したという。個人的な思い入れが先立つ感想ではあるが、森さん支援の行動が一層の「仲間意識」醸成につながったと思いたくなってしまう。今回の参加選手は12月のアジア大会に向け、日本チーム沖縄合宿も間近に控える。池田選手は母校福島大での調整合宿の合間を縫って駆け付けた。日本陸連からの依頼という重みもあったろうが、アスリートが「グラウンド外」でできることへの共感は、森さん支援と何ら変わらなかったのだと思う。

 

 ○…静岡陸上競技協会の調べによると、静岡県内の日本陸連公認選手登録数(中学生以上)は本年度6170人。小学生年代と、中学生以上の未公認選手の実数は定かでないが、静岡陸協は「少年団などで指導を受けた児童が必ずしも中学、高校で陸上を続ける環境にあるとはいえない」と危ぐする。県内競技人口の実態把握に向け、来年度まず中学年代の実数調査に県中体連の協力で着手するという。


 ○…陸上の楽しさを伝える機会の創出は、静岡陸協と静岡新聞社・静岡放送が12月2日に主催する「第7回しずおか市町村対抗駅伝」の開催目的の一つでもある。小学生区間の出場経験がある中高生が陸上の全国大会で活躍する報に接すると、一過性に終わらない大会の意義を痛感する。それは、キッズプロジェクトの目的とも重なる。「夢のキャラバン隊」と副題の付いたプロジェクトは、既に8カ所での開催が決まっている。できるだけ早く、静岡県内の児童にも感動と夢を与える機会が訪れることを願ってやまない。

(11/14 掛井 一也)

 

 「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。


 




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