○…静岡県のサッカーファンには話題満載の一日だった。勝ち点2差で激突したジュビロ磐田と清水エスパルスのJリーグ1部(J1)静岡ダービー、ホンダFCの日本フットボールリーグ(JFL)4年ぶり3度目の制覇、そして三浦知良選手が所属する横浜FCのJ2初優勝と来季のJ1昇格決定。翌日の静岡新聞は1面、社会面、スポーツ面と、サッカーの話題があふれた。
○…苦しいシーズンも終盤の4連勝で勢いに乗る磐田と、前節は3位川崎の優勝の望みを絶つ白星を挙げた清水。久しぶりに肉薄した順位で迎えた30度目の静岡ダービーは、歴代4番目の観客動員となる3万8千人余をエコパスタジアムに集めた。一喜一憂の果ては、PKによる最少得点を死守した磐田が、3年ぶりで静岡ダービーを制した。最終節は鹿島戦。監督交代も経験したシーズンの5連勝終戦は、来季につながる意味は大きい。
○…一方の清水は長谷川監督が開幕前に目標とした「トップ5入り」をかけた最終節となる。6位鹿島との勝ち点差は2。鹿島と対戦する磐田の“援護射撃”の可能性を抜きに、9位広島との最終戦で自力で決めたい。磐田の結果次第では4位争いも再逆転できる。通年成績で磐田を超えるとなれば、磐田のJリーグ加盟1年目以来、実に12年ぶり。長谷川監督の契約最終年となる来季へ期待も膨らむ。
○…Jリーグ県勢は優勝争いに及ばなかったが、ホンダFCが「リーグ制覇」の歓喜を県民にもたらしてくれた。かつて磐田の前身ヤマハ発動機と「天竜川決戦」で幾多の名勝負を演じ、一時はJリーグ準加盟も果たした。親会社の意向でプロ化の道は選ばなかったが、JFL上位がJ2に昇格していく中、アマチュア日本一の称号にこだわり続ける。昨季5位からの巻き返しは、Jリーグ入りを目指す他チーム以上に、「アマに生きる」プライドをかけた戦いであったことだろう。
○…プライドといえば、三浦選手である。横浜FCのJ2優勝。「キング・カズ」と呼ばれ、時代のちょう児にもなった男が、来季J1の舞台に帰って来る。「エコパ3万8000人興奮」の記事を押しのけ、社会面のトップを飾った笑顔はすがすがしい。記事の中で「まばゆい光と暗い影に彩られている」と表現されたサッカー人生。しかし、他人には暗く映った出来事の数々も、三浦流ならば「さらなる飛躍への試練」にほかならない。だからこそ、40歳を目前にして、2部リーグの舞台だろうと、サッカーに臨む姿勢は栄光の時代と変わらない。
○…Jリーグ発足をにらんでゼロからスタートした清水、Jリーグ発足時まさかの落選を経験した磐田、県内3番目のJチーム誕生の道をあえて捨てたホンダFC、そしてプロリーグ隆盛への道を一身に切り開いた三浦選手。期せずして同じ日に紙面を大きく飾るピッチがあった。「サッカー王国静岡は死なず」。それぞれの歩みの重みと歴史があるからこそ、そう思いたい。4者に共通するのは「財産」ではなく「現在進行形」である。開幕を目前に控えたアジア大会サッカーの県勢代表、4年ぶりで全国高校選手権に臨む静岡学園高。ぜひ「進行形」の続きを見せて欲しい。
(11/29 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。