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2006年「スポーツコラムだんまく」

ベンチ入り1試合の重さ

2006/12/26

 ○…松坂大輔投手のボストン・レッドソックス移籍を筆頭に、日本プロ野球界のストーブリーグは今年も米大リーグに挑戦する選手の話題でにぎやかだ。サッカーJリーグからも前清水エスパルスで浦和レッズの日本代表MF三都主アレサンドロ選手と、代表キャプテンも務めたガンバ大阪のDF宮本恒靖選手のオーストリア1部リーグ、ザルツブルグ移籍が決まった。人気選手の海外流出への危ぐや、大相撲における外国人力士の席巻など、スポーツ界のグローバル化はいまだ賛否両論だが、全国高校男子駅伝の1区でアフリカ系留学生4人が先頭集団を形成する映像を見れば、国境なきスポーツ界は「時代の流れ」を超え、自然のレベルに来ていることを痛感させられる。

 

 ○…そのような時代、米大リーグ、欧州サッカーリーグへの移籍以上に快挙だと思わせたニュースがあった。アイスホッケー日本代表GKの福藤豊選手(24)の北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)キングス昇格。NHLのゴールマウスに立つのかと、にわかに信じがたいほどの話だったが、数日後に伝わった速報に、野球やサッカー以上に厳しい現実も見せ付けられた。正GKの負傷に伴う緊急の昇格は48時間に限られ、2日後に独立リーグのチームに一時所属の形で降格となり、その翌日にはマイナーリーグAHLのキングス傘下のチームに戻るというめまぐるしさだった。

 

 ○…2004年のNHLドラフトで日本人2人目となる指名を受けたが、05年はNHLの労使交渉決裂でシーズン自体が中止。あらためて06年に2年契約を結んだが、故障もあってすぐにマイナー落ち。AHLの日本人初出場でさえ快挙だったが、夢のNHLは1試合にベンチ入りだけで、日本人初「プレーヤー」とはならなかった。日本人選手が国際的に活躍するフィギュアスケートやスピードスケートに比べ、日本国内のアイスホッケー人気は「マニアック」である。とはいえ、NHLは大リーグ、アメリカンフットボールのNFL、バスケットボールのNBAと並ぶ北米の大メジャー競技だ。同行2日間とはいえ福藤選手の昇格、ベンチ入りは、日本プロスポーツ史に大きな足跡を残したといって過言ではない。

 

 ○…北米4大プロスポーツと並び称されながら、多くの日本人選手が活躍する大リーグとは異なり、日本人にとってNFLやNBA、NHLの門戸は極めて狭い。もちろん、挑戦を後押しする日本国内での競技史も、野球とほかの3競技とでは大きな隔たりがある。同時に小柄ながらも“天才”の名を欲しいままにした田臥勇太選手でさえNBAの壁をなかなか超えられない現実を見るまでもなく、アメリカンフットボールやバスケットボール、アイスホッケーにおける体格の差は、野球とは比較にならないほど致命的でもある。だからこそ、「氷上の格闘技」アイスホッケーでの福藤選手の快挙は、松坂選手の「61億円報道」にも劣らないビッグニュースだった。


 ○…1972年札幌五輪に影響され、「槍(やり)のハンザワ」といった日本代表選手のあだ名を覚え、筆者は学校の教室でスティック代わりにホウキを振り回していた。当時、静岡市郊外のスケートセンターで見たカナダ代表チームの迫力は恐怖すら感じた。取材に赴いた長野五輪で見たNHLの至宝カナダのグレツキー選手も然り。身長185センチの福藤選手など小兵である。NHLのベンチで見つめた先発GKは2年前から競い合った仲だという。彼の28セーブに及ぶ活躍に、「自分にもできる」と思わせたという談話があった。福藤選手がNHLでプレーするという、とてつもなく大きな1歩を、真冬でも薄氷しか張らない静岡から楽しみにしたい。

(12/26 掛井 一也)

 

 「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。




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