○…本欄も早いもので2度目の新年を迎えた。バックナンバーを見るたびに、折々のに題材を提供してくれた県勢アスリートに感謝するとともに、2007年はどんなドラマを見せてくれるかと、楽しみが募る。さて、今年のスポーツ界は、報道関係者が俗に言う「谷間の年」である。元来「オリンピック・イヤー」に挟まる2年を指したが、オリンピックの翌年に巡るサッカーのワールドカップ(W杯)が国内メディアの主要な取材対象となった今、オリンピック前年を指して「谷間=何もない」と呼ぶ傾向は強まった。
○…昨年のアジア大会で早々に北京五輪出場を決めた女子ホッケーの例外もあるが、アスリートはこの1年、五輪出場権をかけた戦いに挑む。本大会を選ばれし者の「山頂」とするならば、本大会出場をかけた場こそ「登山」であり、「谷間」とはいかにも失礼な表現である。オリンピックやW杯にみるまでもなく、さまざまな国際大会で“お祭り”が演出されるが、われわれ地方メディアの視点は、本大会に通ずる道にこそ向いていなければならない、とあらためて肝に銘ずる。
○…紙面や放送枠に制限はあり、競技の知名度と世間の関心の高さに応じ、競技や選手の扱いに優劣をつけざるを得ない。専門紙や専門チャンネルならば興味の絞り込みも容易だが、老若男女、幅広い読者や視聴者を考えれば、大手メディアが本大会やメダリストに重心を置くのもやむをえない。予選の取材で仕入れたエピソードは、本大会での貴重な補完要素となる。大手メディアが十数行の記事や15秒程度の放送のため国内外に取材陣を送り込む目的の1つは、そこにもあろう。
○…地方メディアはどうか。予選ではあれ、求められる原稿や放送素材の量は本大会同様となる。同時に、予選にこそ多くの取材対象を抱え、県勢の多くは予選こそが本大会でもある。「新記録」でも出さない限り、まさかの苦杯をなめでもしない限り、「出場しました。優勝しました」程度で済む“トップ・アスリート・ウォッチャー”とは決定的に違うのである。地方メディアが、勝っても負けても競技者に「優しい」のは、選手の後ろに家族や親せきの顔、出身地の風景までもが浮かぶからだ。
○…主役に近い存在だからこその「是々非々」が、辛口な論評も含めて求められて当然かもしれない。しかし、追うべき「わが町」のアスリートは天賦の才に恵まれたごく一部を除き、予選から全力でぶつからなければ日の当たる場所には立てない。「甘い」「優しすぎる」かもしれないが、全力の姿にこそエールを送り続ける本欄でありたいと、年頭に思う。
(1/1 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。