○…2007年の幕開けを飾るサッカーの天皇杯は浦和レッズが、大会2連覇とリーグとの2冠を達成した。天皇杯の静岡県勢は、1982年にヤマハ発動機、01年に清水エスパルス、03年にジュビロ磐田が頂点を極め、昨年は清水、一昨年は磐田が準優勝した。清水は98年と00年も決勝に駒を進め、県勢は過去10年で6度も元日決戦に臨んだ。今大会は両チームとも準々決勝で敗退。3年ぶりの静岡ダービー準決勝は実現せず、選手もサポーターも昨年のクリスマスイブから“長い”オフに入った。
○…昨季リーグは清水が4位、磐田が5位。「再生」を掲げた清水OBの長谷川健太監督は就任2年目の躍進を指揮し、就任2年目の磐田OBでアテネ五輪代表監督の山本昌邦氏は途中解任された。初めて通年戦績で磐田を超えた清水だが、最終的な優勝争いには絡めない「若さ」も露呈した。一方、監督交代劇などかつての常勝軍団の衰退を危ぐさせた磐田は、OBであるアジウソン監督の戦術が浸透した終盤の猛烈な追い上げで潜在能力の高さをあらためて見せた。
○…かつて磐田、鹿島、清水の3強トライアングルという表現があった。それぞれに相性があった。磐田は鹿島に悪く、鹿島は清水に悪く、清水は磐田に悪かった。報道陣も選手自身も「不思議なものだね」と口をそろえ、強者同士の四つ相撲を堪能した。その後、磐田が史上初のリーグ完全制覇を筆頭に常勝時代を築き、一方の清水は下降の一途をたどった。一昨年のG大阪、昨年の浦和と初優勝も続き、リーグ勢力地図は大きく変ぼうした。リーグ発足当初はきら星のごときスター軍団だった東京Vは2部降格2年目の昨季も7位に低迷したままだった。
○…03年から3年間、クラブワースト通年成績を更新した清水。04、05年はあわや2部落ちの危機も経験した。現役時代から「熱い男」でならした長谷川監督は、時に強権的ともいえる指揮ぶりで選手を鼓舞した。若手に対しては強烈なカリスマがあり、不甲斐ない戦績を残したベテランには「信じるべき道がケンタさん」だった。若いつぼみが開き始めたのが昨季の躍進だろう。つぼみが「満開」の花を咲かせ、優勝争いに絡むことが、監督契約最終年の今年の命題となった。その意味で3年計画は予定通り進んでいるとも言える。
○…一方、磐田は一昨年の藤田、昨年途中の名波と、常勝の屋台骨を支えた中盤のスターが相次いで移籍した。山本前監督や就任当初のアジウソン監督の戦術に選手の側に疑問が挙がったこともあったが、選手自身の軌道修正は大人だった。突然のシステム変更や相手を想定した戦い方の変更に当初、選手は練習の度に首をひねっていた。しかし、引き出しの多い選手は「慣れ」と「自助作用」にもたけていた。「こんな磐田は磐田じゃない」とまで失望させたちくはぐな戦いは影を潜め、外国人指揮官特有の押しの強さで若手も積極的に登用し、2けた順位後退の心配も終わってみれば前年を1つ上回る順位だった。
○…「世代交代」とは功労著しいベテランの首に鈴を掛けるものではない。劇的な世代交代が現実的でない中、いかに緩やかに段階的に進められるかが鍵である。世代交代期の指揮官は、信念に基づいた潔い改革が求められ、結果が伴わなかった際の身の処し方も潔さが求められる。勝って舞い上がり、負けて罵声(ばせい)はサポーターの性(さが)である。現役時代から「ケンタ」「アジ」と親しまれた両指揮官だけに、勝ち負けの度の「愛憎」の振り子は大きく揺れる。「世代交代」が目に見えて動き出した中、今年は今後の5年、10年を占う重要なシーズンだ。
(1/2 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。