○…常葉菊川高の全国選抜高校野球出場が決まった。静岡県勢の出場は3年前の同校以来。前回は東海地区の出場枠が1減となった初年だったが、愛知・愛工大名電高の明治神宮大会優勝で、東海地区に加わった「神宮枠」に拾われる大きな“助太刀”もあった。しかし、今回は県勢10年ぶりの東海大会覇者として堂々の選出。森下知幸監督(45)は自ら選手に握手を求め、「どこの監督よりも張り切ってやりたい」と語った。
○…1978年の浜松商高センバツ優勝キャプテンの森下監督。89年には監督に就任したばかりの日大三島高を夏の甲子園に導いた。浜松商高の恩師磯部修三氏が率いる常葉菊川高に招かれたのは5年前。3年前の春は師弟で甲子園の土を踏み、昨秋の新チームから恩師の後を継いだ。就任直後の甲子園出場は日大三島高で体験済みだが、コーチとして入部以来指導してきた生徒を率いての喜びは、やはり格別のようだ。
○…磯部前監督は、ち密なベンチワークと機動力を駆使した粘りの野球で「名将」と呼ばれた。選手、コーチとして薫陶を受けた森下監督だが、「選手の能力を引き出すことに重点を置くタイプ」と佐野心部長は評する。「チャンスにバントじゃもったいない」という森下監督の発言は打力至上主義ではない。あくまでも選手を信頼した上での積極さい配であり、投手コーチも務める佐野部長が「とにかく走り込ませた」という田中健二朗投手、戸狩聡希投手の左腕2枚看板を軸にした守備力に対する自信でもあろう。
○…全国を見ても台頭著しい私学勢は、恵まれた練習環境で強化を図る一方、寄せ集め所帯で地域性に欠ける側面を持つ。常葉菊川高も例外ではない。学校から1キロほど離れた東名高速沿いに専用球場がある。昨年の東海大会登録18選手中、実に10人が県外出身者だ。県内出身者に地元小笠地区はいない。
○…だが、県内有数の地域愛に彩られる浜松商高のOB森下監督に「地域との接点は少なくても、強ければいい」との思いはなかったのだろう。菊川駅前や商店街でのごみ拾い、運動公園の清掃や福祉施設の大掃除手伝い。「お世話になっている地域に野球部を知ってもらい、認めてもらおう」。森下監督の発案でこの冬、ナインは地域での奉仕作業にも励んだ。
○…球場外での“懸命プレー”に、応援の輪は広がったはずだ。静岡県民が久しぶりに“古里”を感じる春甲子園は3月23日に開幕する。誕生2年目の菊川市の代表としても、春夏合わせて同校3度目の甲子園での初白星を目指してほしい。そして、静岡新聞の担当記者が「あれよあれよ」と評した東海大会の再現を期待したい。
(1/30 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。