○…たった3行の文章に関係者の怒りが伝わってきた。清水エスパルスが鹿児島キャンプ3日目で行った初の練習試合。FC東京から今季移籍したFW戸田光洋選手が左ひ骨を骨折し、全治3カ月のけがを負った。「相手選手の後方からのタックルによって」。クラブから届いた広報文には、けがをした時の状況が短いながらも記されていた。
○…Jリーグの担当記者当時、取材に出向いていない日の練習で選手がけがをすると、クラブの広報担当に「その時の様子」を確認するのが常だった。広報文は「本日の練習中に…」や「本日の紅白戦で…」程度の表記にとどまり、けがをした時の様子はなかなか伝わらない。「接触プレー」なのか「自爆」なのか、「ドリブル」なのか「空中戦」なのか。記事に必要な要素を聞かなければならない。
○…今回の広報文を見た瞬間、タックルの悪質さに対するクラブ挙げての憤りと、新天地でのシーズン開幕をリハビリで迎えることになった戸田選手の無念さが伝わった。キャンプ中の広報文は、チームに同行している広報担当がクラブ事務所に内容を伝え、地元に残った広報担当が作成する。「後方からのタックル」の事実は、広報すべき重要な情報として、留守部隊にも伝わったのだろう。
○…今でこそ苦笑で済むような昔話がある。あるクラブ広報担当が慌てた様子で、筆者の携帯電話に連絡をよこした。「大変なことが起きました」。都内でのリーグ戦の翌日、居残ってトークショーに参加した主力選手2人が席上、別の主力選手が前日の試合で骨折していたことを明かしたというのだ。筆者は静岡に戻っていた。「他社の記者さんが取材していました。記事になると思います」
○…他紙に「特ダネ」が載ることを気遣っての電話に「感謝」するほかなかったが、けがの話は初耳だった。サッカーくじ導入初年だったと記憶する。主力のけがというニュースが隠されたことは、「くじ予想」に与える影響を考えれば、やってはいけないことだった。公表を控えたのは彼1人の判断ではなかったはずだが、ことさらに教えたくない情報だったのだろう。「広報」に対する認識はその程度だった。
○…ファンの知る権利、知りたい欲求にこたえるべき広報体制は、リーグ発足14年でどう成長したのか。「『5W1H』さえ提供すればいい」サービスなのか、「『具体的な説明』にも触れた」積極的な情報開示なのか。その一方で、正式な広報発表まで「かん口」の傾向は年々強まっているという。ならばこそ、発表時には、より丁寧な内容が求められることを、今回の「充実した3行」を見て思った。
(2/8 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。