○…静岡新聞のカメラマンから先日、「久々にこんなプレーを見たので送ってみました」と1枚の写真がメールで届いた。本欄に添えたジュビロ磐田の中山雅史選手のプレー写真がそれだ。元清水エスパルスの沢登正朗氏の引退試合でのワンシーン。ここ数年、中山選手が「付き合う」腰やこ関節周辺の慢性的な痛みを忘れさせるかのような豪快な瞬間に、当のカメラマン氏いわく「『おおっ』と感激し、どうしても誰かに見せたかった」。
○…静岡新聞日曜版の1面で2月から、写真エッセー「しずおかスポーツ百景」の連載が始まった。写真と文を寄せているのは、浜松市在住のスポーツフォトグラファー久保暁生氏だ。ジュビロ磐田のオフィシャルカメラマンとしても活躍し、ラグビートップリーグの“兄弟チーム”ヤマハ発動機も追い掛ける。歓声と静寂が交錯する芸術性豊かなスポーツ写真に評価も高い。
○…ジュビロ磐田が02年、史上初のリーグ完全制覇を達成した時、久保氏の写真展が磐田市はもちろん、キャンプ地である鹿児島市の百貨店でも盛況のうちに開催された。そんな久保氏が日曜版連載の第1回に選んだのは、当然のごとく中山選手だった。「魂の男」と呼ばれる中山選手の「叫びや息遣いが聞こえる写真を求め続ける15年間」と記していた。
○…掲載写真は昨年9月、前人未踏リーグ通算155ゴールを挙げてのガッツポーズ。こぶしを握り締めた右腕に汗と芝がこびり付いた姿が、あえて白黒プリントされた被写界深度の浅い画面に浮かび上がった。ピンスポットを浴びたかのようであり、画外に聞こえる歓声とは異次元の静寂すら感じさせる1枚だ。中山選手の昨季リーグ戦得点は、この1点のみ。積み重ねた歴史の数だけ、切り取られた瞬間から受け取る物語の数もある。
○…今季キャンプを打ち上げた翌日、熊本市で行ったJFLロッソ熊本とのプレシーズンマッチ。中山選手は後半23分、京都サンガから移籍した13歳年下のFW林選手のスルーパスからDF2人をかわし、対角のゴール右隅に球足長く左足でけり込んだ。体勢低く回しげりのようにすくった決勝ゴール。テレビニュースに見たゴールシ-ンに、本欄掲載の写真同様「よく足が伸びたな」と感心した。
○…中山選手の魅力は、ゴールが生まれる場所にいるきゅう覚と、泥臭くも恐れを知らない飛び込み、そして何より、人よりも半歩、いや1センチ先に伸びる体だ。頭で飛び込み「亀のように首を伸ばしました」、つま先で触れ「長い足に生んでくれた親に感謝します」。中山語録は少なくない。9月で40歳。不惑の「ゴンゴール」に興味は尽きない。1学年上で横浜FCの三浦知良選手の活躍にも触れ、「(J1に)キングが帰ってきましたからね。俺もまだまだ、頑張るつもりですよ」と力強く意欲を口にした。3月3日、Jリーグが開幕する。
(2/26 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。