○…サッカーのJリーグ1部(J1)に初昇格した横浜FC。昨季のJ1王者、浦和レッズのホームに乗り込んでの開幕戦だった。キング・カズこと三浦知良選手(静岡市出身)の“J1復帰”出場は、次節に持ち越されたが、もう1人、注目したい選手がいた。清水エスパルスから期限付きで移籍したDF和田拓三選手(25)=浜名高出=だ。日大4年時にコーチだった元日本代表FWの高木琢也監督の下、プロ4年目で初の開幕スタメンを勝ち取り、左サイドバックとしてフル出場を果たした。
○…清水に入団した2004年、3月のナビスコ杯予選でプロデビュー。1週間後のリーグ第3節でフル出場を果たすと、そのまま第1ステージ全試合にベンチ入り。左の攻撃的MFとして11試合に出場した。この間、ナビスコ杯も全試合に出場し、5月には早くもA契約昇格条件の出場時間を達成した。しかし、第2ステージに状況は一変。ベンチ入りはわずかに1試合、ピッチには1度も立てなかった。
○…その後、昨季までサテライト中心の生活が続いた。「試合で得た経験、出られずに積めた練習。個人的にはいいシーズンだった」。波乱の1年目こそ前向きに振り返ったが、シーズンを重ねるにつれ「何がいけないのか分からない」と首をかしげることも多くなった。清水の3年間で3人の監督に師事した。決して器用な選手ではないが、泥臭いほどに一生懸命さは伝わるタイプだった。「頑張るしかないです」が口ぐせになった。
○…横浜FCの新入団会見は元日本代表FW久保竜彦選手の加入もあり、静岡新聞も写真付きで扱った。久保選手の左隣で緊張の面持ちで並ぶ和田選手に心機一転を期待し、沢登正朗氏の引退試合にカズを追って訪れた横浜FC担当記者から「和田は開幕スタメン候補」と聞かされて喜びもした。57000人で埋まった敵地浦和での開幕戦。横浜FCは後半に決勝点を奪われたが、「J1で戦える」手ごたえをチーム全体でつかみ、熱狂的な浦和サポーターにも痛感させただろう。
○…昨季J2優勝とはいえ、一昨年までは下位が定位置だった。「J1に上がって本当に大丈夫か」。懸念がなかったといえばうそになる。開幕戦の結果だけを見れば、和田選手は2失点ともに絡んだ。浦和の先制点は和田選手のオウンゴール。久保選手のスーパーゴールで追い付いたが、決勝点につながる突破ではブロックを反転でかわされた。和田選手に電話を掛けてみた。移籍後、初めて聞いた声は、帰路の選手バスからだった。開幕戦フル出場を果たした自信と、だからこそ感じる悔しさ-。電話の向こうの言葉に力強さすら感じた。
○…クリアの末のオウンゴールは仕方がないが、「2点目が悔やしい。最低でも(引き分けて)勝ち点1はとりたかった」と繰り返した。「でも、チームも僕もへこんでませんよ。次です、次」。次節のホーム開幕戦は、横浜マリノスとの横浜ダービー。横浜FCはマリノスに吸収された横浜フリューゲルスの継承を標ぼうし、市民クラブとして発足した因縁もある。和田選手はプロ1年目のジュビロ磐田戦以来となる「ダービーマッチのフル出場」に意欲を示し、4月28日にホームで迎える「エスパスルとの個人的なダービー」も心待ちにしている。
(3/5 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。