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2007年「スポーツコラムだんまく」

秀人選手のガッツポーズ

2007/03/20

 ○…頼もしい光景だった。サッカーJリーグ1部(J1)第3節のFC東京戦、ジュビロ磐田のDF鈴木秀人選手(32)が決勝点を奪った。胸のエンブレムを誇らしげに突き出す。ベンチの中山雅史選手らに向かってガッツポーズも連発した。若手を鼓舞するためにも「(チームの)内側から言い続ける」。越年交渉となった契約更改を終え、静岡新聞に載った決意の言葉を思い出した。


 ○…昨年末の天皇杯準々決勝で左太もも裏を痛め、オフはリハビリを続けた。鹿児島キャンプでは初の練習試合を前に、右手甲部分の第3、第4中手骨を骨折した。全体練習の合流は開幕の1週間前。開幕戦で4失点完封負けを喫したゲームキャプテンは、「『甘えをすべて捨てて必死にやっていくしかない』とふがいない結果に怒りの表情を浮かべた」と静岡新聞にあった。


 ○…ホーム開幕戦の第2節は、一度は追い付かれながら勝ち越し。「前節の負けでみんな危機感を持って臨んだ。1試合通して気持ちを全面に出せた」。そして、第3節。連勝を引き寄せる終盤のヘディング弾に、「みんな勝ちたい気持ちが出ていた。押し込まれる場面もあったが、ラインを上げて耐えられた。(GKの)ヨシカツ(川口)もよく止めてくれた」とチーム一丸のゴールを強調した。


 ○…テレビニュースで見た得点は、プロ13年目、リーグ通算9得点目の中でも、会心のゴールではないかと思わせるほどに見事だった。後ろのスペースから飛び込み、相手を完全に幻惑してフリーのポジションに入った。まさに、どんぴしゃのタイミングでゴールネットに突き刺した。ファブリシオの警告累積による退場という数的不利もはね除け、「どうだ」と言わんばかりの表情だった。


 ○…1997年、敵地鹿島で初の年間王者を決めた時、現監督のアジウソン氏と2人でチェアマン杯を掲げた。しかし、試合終了直後には、ピッチになだれ込んだ鹿島サポーターに向かおうとする一幕も。あふれんばかりの闘志は、ややもすると“瞬間湯沸かし器”とやゆされた。しかし、20代後半になると「今季はフェアプレー賞を」と、“年間ノーカード”を目標に掲げた。「そのぐらいの気持ちで。反則を犯さないぐらいに余裕を持ちたい」と笑いながらも真剣だった。


 ○…決してサッカー名門校ではない浜松商高の出身。3年の時にヤマハ発動機(磐田の前身)の練習生となり、卒業と同時に入団。頭角を現した95年には、ブラジルの闘将ドゥンガ氏が移籍。練習でも試合でも「イズム」を徹底してたたき込まれた。ユニフォームの胸に刻まれたエンブレムには、ドゥンガ・イズムを昇華させ、アジアを代表する強豪クラブに君臨した「ジュビロ・イズム」というべき闘魂の歴史が詰まっている。

 

 ○…藤田選手、名波選手、服部選手といった常勝を支えた先輩が相次いでチームを離れ、中山選手も常にピッチの上で鼓舞とはいかない。加えて、FC東京戦は、長くともに戦い続けた昨季ゲームキャプテン福西選手との初対決でもあった。エンブレムを突き出した鈴木選手の鬼気迫る表情に、ジュビロ・イズムを「封印するな」「よみがえらせろ」という内なる叫びが聞こえるようだった。

(3/20 掛井 一也)

 

 「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。


 




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