○…常葉菊川が昨秋の高校野球東海大会で初優勝した時、「あれよ、あれよ、でした」と素直な感想を漏らした静岡新聞の若い記者は、センバツ甲子園取材でその強さを痛感していることだろう。静岡県勢10年ぶりの秋季東海大会制覇から、ついに24年ぶりの選抜ベスト4進出。仙台育英(宮城)、今治西(愛媛)、大阪桐蔭(大阪)-。屈指の好投手、強打者を擁する強豪校を連破した力は本物だ。日程が順調に進めば準決勝は4月2日の第1試合。大会初日登場の1回戦に始まり、最終日の決勝まで甲子園で試合ができるか、大いに楽しみだ。
○…1回戦の仙台育英戦は14三振を喫しながらも、勝負どころを逃がさず、守っては田中投手と戸狩投手の継投で振り切った。2回戦の今治西戦は田中投手が毎回の17奪三振で完封し、打線も中盤以降の10得点で大勝を収めた。静岡県勢の春夏通算120勝目だった。「思い切ってぶつかる」と話した準々決勝は、締まった試合内容の上の逆転勝ち。八回に同点、九回に勝ち越しは、森下監督が1978年センバツ優勝キャプテンを務めた「粘りの浜松商」「逆転の浜松商」を思い起こさせた。
○…1983年の県勢ベスト4は東海大一(現在は東海大工と統合で東海大翔洋)。エースは杉本尚彦投手、背番号10は双子の兄康徳投手だった。5年前の春決勝で浜松商に敗れた福井商を1回戦で下すと、続く桜美林戦(東京)はヒジ痛悪化の尚彦投手に代わり、康徳投手が先発。兄弟完封継投で8強に進み、準々決勝では享栄(愛知)に延長10回サヨナラ勝ち。完投の尚彦投手は準決勝の横浜商(神奈川)戦は7回で降板。0-4と力尽きたが、当時の静岡新聞記事は「1球投げるたびにズキズキ」の見出しで、その力投をたたえた。
○…同年のセンバツ球史をめくれば、11打席連続出塁の新記録を達成した享栄の藤王選手、夏春連覇を果たした池田(徳島)の水野投手ら、プロでも活躍した名前に懐かしさと遠い日を実感する。田中元首相がロッキード事件で実刑判決を受け、韓国の全斗煥大統領がビルマの首都ラングーン(現ヤンゴン)で爆弾テロに遭い、韓国の副首相、閣僚ら17人が死亡した。今のテレビゲーム時代の素地を築いた“ファミコン”を任天堂が世に出したのもこの年。そんな時事を振り返れば、昔日の思いはなおさらだ。
○…常葉菊川の甲子園チーム打率は3試合で1割9分6厘。2けた得点試合もあって意外な感もあるが、敵失に乗ずるなど少ない好機を生かしたそつのない攻めの証拠でもある。24年前の県勢4強を取材した大先輩は「当時の東海大一は本当に強かった」と振り返る。実際、当時のチームを今でも県勢史上最強に挙げる高校野球ファンも少なくない。「今年の常葉菊川も強いぞ」。辛口でも知られるの先輩記者から久しぶりに聞いた県勢代表への大きな期待。誰も異論はないだろう。
(3/31 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。