○…今夏の高校野球静岡大会は、三島北が男女共学化の復活4年目で53年ぶりの大会復帰を果たし、史上最多120校が参加した。しかし、少子化・生徒減に伴う県立高校の再編整備が進む中、参加校が減少傾向に転じるのは必至だ。来春から総合科学技術高校に統合再編の静岡工と清水工、単位制定時制の三島長稜高校に移転改編され、野球部の歴史に幕を閉じる長泉。それそれが学校球史最後の夏に挑んだ。
○…もう1校、最後の夏と危ぶまれている学校がある。県内で唯一、分校野球部の歴史を重ねる下田南南伊豆分校だ。下田南の本校は来春、下田北と統合し、下田北校地に下田高校として再出発する。本校には野球部がないため、新生の下田野球部は下田北野球部が移行する。園芸系の1学年1学級の南伊豆分校は下田南伊豆分校に野球部の名称を変えて白球を追うことになる。
○…しかし、1、2年生部員は6人。大会帯同の今夏未登録の2年生部員2人を加え、新チームは8人で出発する。来春の新入生入部に期待は掛かるが、「秋の大会を経験するとしないとでは大きな違い」と木村幸靖監督。地域の声援にこたえるためにも、部員も指揮官も「あと1人(の入部)」が大命題だ。和歌山・日高中津分校が春センバツ出場で全国の注目を集めた1997年の同好会スタートから10年。高野連加盟で夏の大会に参加して9年目で、部存続の危機に直面している。
○…1998年夏の初陣は1-26、2年目の夏も0-20。強豪校相手の大敗で始まった部史は、3年目で初陣藤枝西を相手に「歓喜の夏1勝」を挙げると、4年目には3回戦、ベスト16に進出し、秋季大会は地区4位で県大会も経験。翌2002年も3回戦までこまを進め、ベスト8入りした加藤学園に延長まで食らいつき、“分校旋風”を起こした。
○…掛川西2年生で夏の甲子園を経験した木村監督は、「当時の自分たちはベスト8ぐらいから本気になるような感じだった。1つ勝つことの大変さ、大切さは、ここに来て初めて分かった」と語り、赴任3年目の新任校で「指導者としていい経験をさせてもらっている」と感謝する。それだけに、生徒と一緒に成長できる舞台が、今秋以降もあることを信じてやまない。
○…今大会初戦はコールド勝ち。2回戦も甲子園経験のある日大三島を相手に9回を戦い抜いた。「私はベンチの前に立ってるだけ。生徒が自分で考えてやってくれた」。小中学校で野球を本格的にやった経験のある部員は3人のみ。「今大会の頑張りを見た一般生徒が1人でも野球部の門をたたいてくれたら」と応援席を見上げた。
○…中学3年の夏に青森県から西伊豆中に転校した3年生エースの成田有選手は、「分校の野球は楽しい。上下関係はないし、頑張ればレギュラーにもなれるし」。初戦は被安打1、9奪三振で無失点。2回戦は与死四球9、被安打7で7失点の敗戦ながら、気合の投球で9回のうち6回を無失点に抑えた。「夏の感動と楽しさは格別。これを経験しないなんてもったいない」と、まだ見ぬ9人目の後輩にアピールする。
○…磐田南部中から遠路進学した2年生の山内捷捕手は、木村監督の掛川西時代の恩師で昨夏準優勝の浜名・山内克之監督の子息。「明日から練習と新入部員の勧誘です。いつかは浜名とも戦ってみたい、ボコボコにされるだろうけど」と笑った。唯一の1年生レギュラーで松崎中出身の花田真志三塁手も、「1年生男子19人のうち野球部員は2人。運動神経のいい同級生がいると、入らないかなと思って見ています」とスカウトの目は忘れない。
○…同校のほかにも、部員5人で冬を越した気賀、昨秋7人でスタートの二俣、3年生のいなかった森、昨秋と今春は部員不足で出場を辞退した三ケ日など、苦境を乗りこえて夏の舞台を踏みしめた学校は少なくない。県教委の再編整備計画にしても、2009年度の森と周智、2010年度めどの修善寺工と大仁をはじめ、多くの統廃合の方向が打ち出されている。来年以降しばらくは、覇権争いとともに、“最後の夏”をめぐる話題が続く静岡県の高校野球である。
(7/24 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。