○…全国高校野球選手権静岡大会は、春選抜で全国制覇した常葉菊川と昨年覇者の静岡商という両雄が決勝まで勝ち上がり、常葉菊川が春夏連続の甲子園出場を決めて幕を閉じた。開幕が雨天で2日延び、開会式は初めて中止となり、1回戦の第2日も雨天の影響で2日に分けて行った。異例の変則日程は選手をはじめ、関係者に苦労を掛けたはずだが、いざ試合となれば近年まれに見る白熱したゲームの連続だった。劇的な本塁打こそ少なくなかったが、総本数29本は昨年から半減。コールドゲームも12試合減り、延長戦は7試合も増えた。
○…静岡新聞社・静岡放送が本サイトと携帯サイトで募った応援メッセージも、多くの声援が連日届いた。「今年の予選は面白いって!思いませんか? 去年の覇者静商は甲子園、国体で名門復活をアピール。常菊はなんと全国制覇! 全国の野球ファンが注目する静岡予選で打倒静商、打倒常菊を胸に近年になく白熱してます。こうしてレベルというものは あがっていくんですね。その中で敗けない静商、常菊はすばらしい」。準々決勝を終えて焼津の匿名希望さんが投稿された思いに、県民すべてが異論ないだろう。その気持ちは決勝を終えた今も変わらない。
○…常葉菊川の森下監督は29年前の春、浜松商の主将として紫紺の大優勝旗を持ち帰った。当時から、“逆転の浜商”は高校野球ファンに広く知られるところだった。しかし、今夏の常葉菊川は指揮官のお株を奪うほどに土壇場で地力発揮の連続だった。3回戦の日大三島戦は4点を追う展開から、9回に前田選手の本塁打で追いつき、延長13回に酒井選手が決勝弾を放った。4回戦の静岡戦も9回に石岡選手の同点弾が飛び出して延長戦を制すと、準決勝は逆に東海大翔洋に9回、同点本塁打を許したが、最後に田中投手がサヨナラ打を運んだ。
○…一方の静岡商は2回戦で、浜名との昨年決勝の再現を制し、“微笑の左腕”大野投手は準決勝まで3試合連続完封を披露した。昨夏は同窓会も悲願だった32年ぶりの甲子園出場を果たし、今夏は38年ぶりの夏連覇に王手まで掛けた。今年の春季大会は地区大会2回戦で敗退し、今大会は1回戦から登場のノーシードで臨んだ。大黒柱の大野投手に加え、打線も準決勝まで6試合で31得点を挙げ、機動力も生かした勝ち上がりの安定感は大会随一の印象を与えた。
○…ただ、常葉菊川にしても、今大会に至る道のりは平たんではなかった。全国の私学を揺るがした特待生問題の余波を受け、県大会シードの春季大会は控え組で臨んだ末に初戦敗退。このまま全国制覇の注目と重圧に押しつぶされていくのかとさえ案じられた。しかし、夏の舞台には終盤までリードを許しても動じない常葉菊川がいた。それは春全国制覇の自信とプライドに支えられ、あらためて日本一を勝ち取ったナインであることを実感させられた。
○…甲子園大会は5日に組み合わせ抽選会が行われ、8日に開幕する。静岡大会の優勝インタビューで「春夏連覇は常葉菊川にしかできない権利」と水も向けられた。長い歴史の中で春夏連覇を達成したのは、わずか5校。最も近年では“怪物”松坂投手を擁した1998年の横浜がそうだ。果てしなくこう配のきつい道のりだが、そんな夢が見られる全国で唯一の県民としても楽しみたい。
(8/2 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。