○…Jリーグ1部(J1)清水エスパルスの伊東輝悦選手(33)が、J1通算400試合出場を達成した。サンフレッチェ広島を迎えたホームの日本平スタジアム。16000人の観衆で埋まった“祝賀ムード”に、伊東選手も自分と同じ誕生月の8月に生まれたばかりの長男昊輝くんを抱いて試合前の記念撮影に納まってみせた。結果も3-1の白星。1点リードで迎えた後半半ばにはゴールの枠内で相手シュートを頭でクリアし、チームメートもサポーターも願ったメモリアル勝利を自ら後押ししてみせた。
○…「400試合出場」は名古屋グランパスの藤田俊哉選手(36)が今年6月に記録して以来、史上2人目の快挙だ。出身高校こそ違うが、静岡市清水区生まれの2人が日本サッカー史に名を刻んだ。サッカー王国・静岡にまた1つ勲章が増えた。「長いことやってきたんだな」と素直な感想を寄せた伊東選手。結婚前から大の子供好きは、息子を連れた初めての入場に「いいものだな。次はもう少しサッカーが分かる歳になってからしたいと思う。それにはまだまだ現役としてやり続けなければいけない」ときっぱり。運動量豊富ないぶし銀のプレーで、まだまだオレンジ軍団の屋台骨を支える覚悟だ。
○…取材で付き合いがあった伊東選手は20代だった。試合後の囲み取材に口数こそ多くはないが、常に的確で明快な分析ぶりが印象的だった。自ら切り上げることはなく、報道陣の質問が終わるまで足を止めた。敗戦にも嫌な顔ひとつ見せずに答え、自らの出来のまずさを真っ先に悔いた。勝利の笑顔も破顔というより、照れ笑いに近いシャイな男。「しゃべらないわけじゃないですよ。(取材相手との関係に)慣れたら話すでしょ」。初めは遠慮がちな問い掛けだった筆者に、いつだったか笑いながら言ってくれた。
○…1998年のワールドカップ(W杯)フランス大会代表に選ばれた際、関係者から逸話を集めた。ラフな服装が好きな伊東選手。後援会の集いにネクタイぐらい締めて出たらと言われ、ネクタイがデザインされたTシャツ姿で登場した。「テル君らしい」と“好評”だったと聞かされた。袖師小時代に選抜された清水FCでは群を抜く体格の大型FWで鳴らした。「そのまま(身長が)止まってしまった」。古くから注目してきたサポーターの笑い話だ。残念ながらフランス大会に出場機会はなく、4年後の日韓大会は直前の大けがで代表選考からは漏れたが、「中盤のダイナモ(発電機)」は清水一筋で試合数を重ねた。
○…96年のアトランタ五輪でブラジルを破った「マイアミの奇跡」で決勝点を挙げた。相手GKのこぼれ球を拾った得点に、「典型的な『ごっちゃんゴール』。いつまでも言われたくないな」とこぼした。あのワンプレーで止まっているわけではないと言いたげだった。400試合出場を伝えた静岡新聞記事を締めくくった言葉は、「まだやれると思うし、やりたい」。鋭い読みと献身的な動きで「ヘソの守備」を支え、中盤で才能あふれる若手の攻撃を生かす兄貴分。彼の後継者選びは清水の将来をも左右しそうだが、まだまだ先の話にしよう。
(11/12 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。