○…今夏の北京五輪は静岡県勢の活躍とともに、開催国中国のメダル獲得数にも注目したい。前回アテネ五輪で中国は金メダル32個を獲得し、1位アメリカの35個に肉薄した。昨年暮れ、中国国営の新華社通信は、「中国は北京五輪のメダル争いで、米国、ロシアを抜き、トップに立つと予想されている」との記事を配信した。五輪の国別メダル獲得数は、全メダル数ではなく、金メダルの数で争う。これが大胆予想なのか、自信に裏付けられた数字なのか。米ロに並ぶスポーツ大国の登場なるか、会場の「加油(頑張れの意)」連呼の中で注目だ。
○…中国の一流選手は幼いころから国に選別され、国の管理下で育成される。まさに「挙国体制」である。旧ソ連や旧東欧諸国における同様の管理システムは歴史の1ページとなっただけに、最後の国家育成大国として、中国がメダリスト量産を結実させるのか興味深い。90年代に女子陸上界を席けんした「馬軍団」の驚異的な記録連発や、これら選手の突然のシドニー五輪不参加で、組織的な薬物違反に対する疑念を抱かせた苦い経験も持つ。北京五輪は反ドーピング先進国を内外に向けて宣言する好機でもある。これは、昨年相次いで指摘された「食の安全」「玩具の安全」に対する国際的な不信感の払しょくにも通じる。
○…国家育成システムは否定されるべきではない。日本も北京五輪200日前の節目を選び、今月21日にナショナルトレーニングセンター(NTC)が正式オープン。2000年に文部科学省が発表した「スポーツ振興基本計画」で必要性が示されたNTCは、昨年1月オープンの陸上トラックなどの屋外施設を含め、総事業費約370億円が投入された。地上3階、地下1階建ての屋内施設には、世界最大1000畳敷きの柔道場など10競技の専用練習場を整備した。開設は国内スポーツ界挙げての悲願であり、国会議員のスポーツ議連も先頭に立った。
○…昨年はドーピング関連のニュースが世界を駆け巡った。静岡国際陸上でも印象的な笑顔を残し、シドニー五輪で金3個を含むメダル5個を獲得した元女子陸上選手マリオン・ジョーンズ(米国)のドーピング告白は衝撃的だった。禁止薬物使用選手名の公開で日米球界を揺るがした「ミッチェル・リポート」も激震だった。元大リーガー長谷川滋利氏は静岡新聞掲載の連載で、「安心してお茶も飲めず、風邪もひけない。これがどれほどストレスのかかる状態か」と問い掛けた。国体にドーピング検査が導入されたのは、03年の静岡国体から。当時、選手に配布された冊子は、漢方系の市販の風邪薬や胃腸薬の名前まで挙げ、禁止薬物に似た成分の含有を注意した。
○…自国開催で中国選手に課せられる「メダルの重圧」は想像に難くない。漢方薬の日常的な摂取でさえ、慎重にならざるを得ないストレスもあろう。さまざまな重圧を乗りこえた末のメダルラッシュは、スポーツ強国としての“中華思想”の開花であり、「北京五輪後」の中国スポーツ界の隆盛も予想させる。新華社予想は「有望種目」だけで、アテネの金32個に届く計算だ。一昨年のドーハ・アジア大会で中国は、金メダルの4割近くを独占した。中国の165個に対し、日本50個、韓国58個。総数も中国316個、日本198個、韓国193個と大差がついた。もちろんメダル至上ではないが、五輪後、その差は永遠に縮まらないと思わせるところまで広がるかもしれない。
(1/3 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。