○…「園児と交流や奉仕 常葉菊川高野球部員、地域貢献活動の一環」。昨年末、こんな見出しの記事が静岡新聞に載った。そして、1年前の同様の記事を思い出し、隔世の感を覚えた。一昨年、ナインが初めて奉仕活動を行った際、就任から半年の森下知幸監督は静岡新聞の取材に答えた。県外部員も多く、学校と寮の往復になりがちな生活に、「地元住民に野球部のことを知ってもらい、認めてもらおう」と。1年後の記事にあった部員の奉仕を受けた保育園園長の親近感にあふれた言葉が印象的だ。「本当に頑張ってるので来年も応援したい」
○…初めての地域奉仕から4カ月。静岡県勢29年ぶりとなる春センバツ甲子園優勝を飾ったナインを、1500人の市民らが出迎えた。校門から約50メートルの桜並木。上り坂を歩いて凱旋(がいせん)すると、沿道から大歓声が沸き起こった。さらに4カ月後、県勢34年ぶりの夏の甲子園4強入りも果たし、再び多くの市民の出迎えを受けた。熱狂的な歓迎は好成績とともに、森下監督が願った「野球部の認知」を強く印象付けた。
○…一方で、望んだはずの「認知」の影響は、現役時代にセンバツ優勝経験者である指揮官をして、「普通の生活をするのがこんなに大変だったとは」と驚くほどに予想を超えた。ナインの顔は広く知られ、行く先々で激励を受けた。うれしい半面、「期待を裏切れないプレッシャーにもなった」とエースだった田中健二朗投手は振り返る。全国の高校球界を揺るがした特待生問題も追い打ちをかけた。田中投手をはじめ主力の中に県外部員を抱えていた。注目度の高い春王者の夏への道のりは、口さがない世間の厳しい視線にさらされたのも事実だ。
○…そんな周囲の空気を払しょくしたのも、選手自身だった。佐藤由規投手(仙台育英)、中田翔選手(大阪桐蔭)といった超高校級の豪腕、強打者を退けた春同様、攻守に「強気」を合言葉に、夢のまた夢と思われた春夏連覇まであと1歩に迫ってみせた。攻めの姿勢を崩さずに、「結果を残せたのは、市民や県民のみなさんの応援のおかげ」。相馬功亮主将は春も夏も開口一番、感謝し、市民からは「ありがとう」の声が飛んだ。春夏の甲子園大会で本サイトと携帯サイトで募った応援メッセージも、試合を重ねる度に増え、親近感が広がるさまは明らかだった。
○…今春のセンバツ甲子園(3月22日開幕)出場校は今月22日の選考委員会で決まる。常葉菊川の明治神宮大会優勝で、東海地区からは、明治神宮枠として1校出場校が増える。東海大会連覇の常葉菊川と準優勝の中京大中京(愛知)は当確だ。神宮枠には東海大会準決勝で常葉菊川に敗れた常葉橘が選ばれるのかも注目だ。1980年、81年のPL学園(大阪)以来となる常葉菊川の春連覇の夢も含め、今年の春もまた甲子園から目が離せない。
(1/2 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。