○…新春恒例の箱根駅伝に、しずおか市町村対抗駅伝を思った。早稲田大が往路を制し、駒沢大が総合優勝した今回。途中棄権3校の大波乱レースで、たすきをつないだ静岡県出身選手は4大学4選手、補欠登録も1選手がいた。5人はいずれも小中学生時代から市町村対抗駅伝の出場経験を持つ。84回の歴史を持つ“箱根路”にははるか及ばないが、成長した彼らの勇姿に、8回を重ねた“駿河路”の歴史を思った。史上3人目となる3年連続区間新記録を達成した者、完全優勝翌年のアンカーながら繰り上げスタートでたすきを受けられなかった者、来年のシード権争いを繰り広げた者、1年生で代表を任された者など、県勢選手のドラマも尽きなかった。
○…特筆は東海大7区の佐藤悠基選手(3年、清水町立南中-長野・佐久長聖高出)だろう。7区(小田原-平塚、21・3キロ)の区間記録を18秒更新した。日本長距離陸上界のホープは、1年の3区、2年の1区に続く区間新で、昨年のトラック種目で極めた不振を払しょくした。このほか、沿道の声援を受けたのは、神奈川大3区の天野峻選手(1年、藤枝明誠高出)、東洋大9区の中田貴勝選手(4年、浜松日体高出)、順天堂大10区の矢島冬吾選手(4年、清水南高出)。中央大の補欠には大石港与選手(1年、富士東高出)も登録された。
○…当日エントリー変更で出場したルーキーの天野選手は、20校中の19位と出遅れたチームを区間11位で先輩につないだ。中田選手は来年のシード権争いとなるし烈な10位争いを展開し、最後の箱根で任された復路最長区間を9位に上げてアンカーにつないだ。昨年覇者の順天堂大は、往路最終区の山上りでまさかの途中棄権。オープン参加扱いとなった復路も最終の戸塚中継所でたすきをつなげず、矢島選手の最初で最後の「箱根」は無念の繰り上げスタートとなった。大石選手は7位でフィニッシュした先輩たちの走りを見つめ、来年の出場を誓った。
○…しずおか市町村駅伝を振り返ると、佐藤選手は清水町代表として中学3年の第2回大会で9区に区間新をマークした。中田選手は磐田市代表として、磐田南部中、浜松日体高、東洋大を通じ、第1回大会から5年連続出場。矢島選手は高校3年間、清水市代表に選ばれた。天野、大石の両選手は富士川一小、富士川一中の同級生だ。天野選手は小6の第1回大会で2区区間新を記録し、中1でも出場した。翌年は大石選手が中2の駿河路をかけ、富士東高2年の第6回大会では4区で区間新を樹立した。
○…佐藤選手による箱根駅伝7区の区間記録は、13年ぶりの更新だった。ルーキーで記録した一昨年の区間新は11年ぶり、昨年も13年ぶりの更新。加えて、昨年の2位との4分1秒差は、箱根駅伝史上最高のタイム差だった。「怪物」「スーパールーキー」「至宝」-。中3で3千メートルの中学日本記録を樹立し、高校でも1万メートル歴代1位、5千メートル歴代3位。大学1年でインカレ1万メートル優勝、ユニバーシアード1万メートル4位、2年のインカレ5千メートルも日本人1位。ジュニア時代から伸び悩みを経験せず、一気に“世界”を視野に入れた。
○…しかし、昨年のトラック競技は日本学生対抗1万メートル8位、5千メートル9位、日本選手権5千メートルは14位と惨敗。大阪で開かれた世界陸上出場を逃した。選手生活で初めて経験した“失速”の悔しさをバネに10月、1万メートルで自己ベスト27分51秒65をマークし、北京五輪参加標準記録B(28分10秒)を突破した。伊達選手(4年)との2枚看板で、初優勝を狙った箱根駅伝は東京・大手町にたすきは戻らず、まさかのシード落ち。「悔しさだけが残る」と語った言葉は、「駿河路」から「箱根路」を経て、「北京」でのリベンジ実現へとつながる。
(1/4 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。