○…静岡県勢のJリーグ2チームの白星“共演”は気持ちいい。ナビスコ杯1次リーグの開幕戦。清水エスパルスはFC東京に3-1、ジュビロ磐田は東京ヴェルディに2-0で、それぞれ快勝した。開幕したばかりの今季リーグ戦はともに黒星スタートだっただけに、なおさらだ。リーグ戦の合間を縫った強行日程。第2戦は清水がスコアレスドロー、磐田は完封負けを喫したが、初戦は両チームとも満を持して“今季開幕戦”となったベテラン選手の活躍が光った。
○…清水はFW西沢明訓選手(31)が、昨年5月23日以来の先発出場。今季リーグ2試合はベンチ入りしたが、出番は訪れていなかった。過去7年間、清水が白星から見放されていたナビスコ杯初戦。「勝ちにこだわりたい」という長谷川監督が、攻撃の切り札に指名したのが、地元の清水に移籍2年目のシーズンを迎えた西沢選手だった。
○…10年間のセレッソ大阪在籍を経た故郷チームへの移籍は、単なる心機一転以上の期待が大きかった。しかし、昨季は天皇杯3試合2得点の活躍もあったが、リーグ戦は22試合で無得点、ナビスコ杯6試合で1得点。2000年にリーグ戦29試合で15得点をマークしたストライカーぶりまでは望まないが、決して本人もサポーターも納得する成績ではなかったはずだ。
○…「西沢、全得点に絡む」。8年ぶりでナビスコ杯白星スタートとなった清水の静岡新聞の見出しだ。「得点はできなかったけれど、チームが勝てて最低限の仕事はできたと思う」。矢島選手の先制点をパスで演出し、シュート機に倒されて得たPKを藤本選手が決めて勝ち越し、高木和選手のダメ押し点は競った球が起点となった。切り札指名の際は「彼の得点に期待したい」と語った長谷川監督でさえ、「完全復活と言っていい」と称賛する献身的な働きだった。
○…一方、磐田はMF名波浩選手(35)が後半途中の投入で、十分すぎるほどの存在感を示した。セレッソ大阪、東京ヴェルディへ延べ1年半のレンタル移籍を経ての復帰第1戦。磐田は先制してから一気に畳み掛けられず、逆に攻め急いでカウンター攻撃に遭う場面も続いていた。名波選手の出場時間は20分強だったが、「明らかにゲームが落ち着き始めた」と静岡新聞は伝えた。何よりもサックスブルーのユニホーム姿の掲載写真に、「やっぱり似合うな」と感じ入った。
○…「左サイドで西のパスを受けると、左からゴール前に切れ込んできた上田の前にスルーパス。わずかの差で通らなかったが、サポーターを大いに沸かせた」。頭をわずかに後ろに傾けて悔しがる名波選手の仕草が新聞記事から想像できた。「ボールを落ち着かせ、人を動かして決定機を作るのが役目」を自認する。それは技術的な面だけでない。ピッチの外においても精神的な面で後輩を鼓舞する。
○…鹿児島キャンプのJ2ロアッソ熊本戦でも、名波選手が投入されると「1本目の45分との相違は明らかだった。名波の指示で全体のバランスは改善。パスもリズムよく回り始めた」と静岡新聞にあった。一時は引退も考えた中での古巣復帰は、愛する磐田の再建でしかない。「俺に頼られてもしょうがない。いるヤツがやっていかないと」。“ファンタジスタ”“魔法の左足”。華麗な形容を欲しいままにした司令塔が、泥臭くも体を張って経験を伝え始めた。
(3/24 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。