○…「韓国、AHFに罰金支払いへ」「日本、罰金支払い拒否」。新聞で一番小さな見出しの記事、いわゆるベタ記事、加えて最下段の掲載だった。気づかなかった静岡新聞読者の方も多かったかもしれない。アジア・ハンドボール連盟(AHF)が異例のやり直しとなった北京五輪アジア予選に参加した日本と韓国に罰金処分を課した問題で、韓国ハンドボール協会が支払いに応じる意向を明らかにし、これを受けて対応を協議した日本ハンドボール協会はあらためて支払い拒否の方針を決めたという。
○…韓国協会が支払い拒否の姿勢を一転させた理由はこうだ。韓国男子は中東勢がボイコットした1月のやり直し予選で、日本との一騎打ちに勝って五輪出場を決めた。スポーツ仲裁裁判所がやり直し予選を無効とした女子も世界最終予選で出場権を獲得した。記事によると、韓国協会の幹部は「男女とも出場権を得た。(AHFと)悪い関係を続ける必要性を感じない」と述べたとある。罰金が倍額になる期限までに支払うという。すなわち、「やり直し予選は有効で、ペナルティーも有効としよう」という、つじつまの合わない極めて政治的な判断である。
○…昨年9月、愛知県豊田市で開かれた男子アジア予選は、「中東の笛」と呼ばれる中東寄りの不可解な判定に対する日韓両国協会の抗議を受け、国際ハンドボール連盟がやり直しを命じたのは周知の通り。豊田大会で優勝したクウェートの出場権は失効し、1月に日韓両国だけ参加して東京で開かれたやり直し予選で韓国が日本を下し、五輪代表の座を射止めた。国際連盟が審判のフェアプレーに疑念を認め、ハンドボール競技としては前代未聞ともいえるメディアの注目も浴びた。やり直し予選に勝った韓国はもちろん、負けた日本も「正義の結果」として納得したはずだ。
○…フェアプレーの精神、正当なルールというスポーツの基本をたてに実現した異例のやり直し予選。「出場権を得たのだから」という韓国協会の「心変わり」は、果たしてフェアだろうか。「まあ、いいじゃないか」では、「中東の笛」と何ら変わらない。AHFが求めた罰金はわずか1000ドル(約10万円)。事態の大きさの割には極めて小額だが、もちろん金額の大小ではない。通すべき筋は通し続けなければ、競技団体としての威信にかかわる。状況に応じて姿勢が揺らぐのであれば、き然とせずに揺れた判定の批判などできないだろう。
○…日本女子は3月末、五輪世界最終予選の王手をかけた一戦で、世界選手権8位のハンガリーに敗れ、32年ぶりの五輪出場はならなかった。男子の世界最終予選は5月下旬から行われる。思わぬ形で注目を集め、これを契機に「真のメジャー化」の夢は、男子代表の”イケメン広告塔”宮崎大輔選手の言葉のみならず、静岡県内の競技関係者の願いでもあろう。「国際連盟の決定に従って再予選に参加しただけでなぜ罰金を支払う必要があるのか」という日本協会は、やり直し予選で出場権を得ていてもき然とした態度を貫いたと信じる。揺るがない姿勢こそ、「メジャー化」への第一歩である。
(4/5 掛井 一也)