○…今秋、静岡県内に男子プロバスケットボールチームが誕生する。浜松市と愛知県・東三河地区をダブルホームタウンとする「浜松・東三河フェニックス」だ。国内初のプロリーグとして発足4シーズン目を迎えるbjリーグに来季参戦する。愛知県豊川市に本社を置く工作機械・測定工具などの製造会社「オーエスジー」の実業団チーム「フェニックス」が母体で、アマチュアトップリーグの日本リーグ-JBLに9年間所属した。今秋開幕の2008-09年シーズンから、滋賀レイクスターズとともにbjリーグに新風を起こす。
○…創部は1965年と古い。85年に愛知県実業団リーグ11部に登録し、以降、毎年のリーグ優勝で同2部リーグにまで一気に駆け上がった。99年の全日本実業団選手権優勝で日本リーグ2部昇格を果たし、翌年には早くも優勝。01年から1部に昇格した。日本バスケットボールリーグ(JBL)最後のシーズンとなった昨季は「オーエスジーフェニックス東三河」として、愛知県豊橋市総合体育館をホームアリーナに通算成績20勝15敗で3位。センタープレーヤーのマーキース選手が年間ベスト5に初選出された。
○…浜松、豊橋両市でそれぞれ行ったbjリーグ新規参入会見で、ヘッドコーチに就任する元女子日本代表ヘッドコーチでオーエスジー総監督の中村和雄氏は「NBA(米プロバスケットリーグ)スタイルの個人技をメーンにした速いバスケ」を標ぼうし、リーグ変更に伴って全員が移籍リスト登録となるオーエスジー所属だった選手には「全員残留してもらえるよう交渉中」だと表明した。また、NBAスタイル追求に向けて新外国人の相当数の加入を目指し、韓国人シューターの獲得も示唆した。
○…中村氏はJBLとbjリーグに分かれる国内リーグの現状にも触れ、「JBLでなければ日の丸を着けられないのはおかしい」と指摘した。日本代表選手が国際バスケットボール連盟(FIBA)、国際オリンピック委員会(IOC)や日本オリンピック委員会(JOC)に連なるJBL所属チームの選手からのみ選出される現状に対する見解だ。「日本代表選手を強化・育成する母体組織として、世界で常に戦える強い日本代表の育成に努める」ことを宣言するJBLと、プロリーグこそが最高峰リーグと信じるbjリーグの自負。「日本バスケットボールよ強くあれ」こそ共通認識だが、両者の間にある隔たりはなかなか縮まらない。
○…JBL側からすれば、bjリーグにはチーム契約選手に国籍制限がなく、コート上は外国人選手ばかり、日本人選手の強化・育成に寄与しているのか、という疑問はぬぐえない。一方、bjリーグ側からすれば、それは最高のパフォーマンス提供であり、その中でも活躍できる日本人選手に代表資格がないのは不合理と映る。しかし、組織論の是非は横に置いて、静岡県のバスケファンとしては、5月のプレーオフでbjリーグ3連覇を目指す大阪エヴェッサのフォワード波多野和也選手(静岡学園高-専修大出)が日の丸を着ける姿を見てみたいと思うだろう。
○…JBLでもダブルホームタウンはあった。東京・府中市を本拠地にするトヨタ自動車が一時、静岡市とのダブルホームタウン制を敷いたことがある。高校時代を知る加藤吉宗選手(沼津学園高-日大出、現レラカムイ北海道)が在籍し、ヘッドコーチは筆者年代のスター選手の小野秀二氏だった。しかし、もちろん練習場は府中市で、静岡市ではリーグ戦の数試合をホームゲームとして実施した程度だった。「地元戦」の取材に加藤選手も小野氏も丁寧に応じてくれたが、取材をする側にも受ける側にも「ホーム」と呼ぶには互いにどこか無理があったのも事実だった。
○…浜松・東三河フェニックスの運営会社は6月1日、浜松市東区に設立される予定だという。浜松側は浜松アリーナをホームアリーナとするが、練習場は当面、愛知県豊川市のままだという。当然、選手の住まいも愛知・東三河地域となる。参入当初の目新しさはあるだろうが、浜松市民をはじめ、静岡県のバスケファンにとって、恒常的な「ホームタウン」意識の醸成は簡単ではない。しかし、bjリーグ所属チームの大半は、仙台、新潟、富山、高松、大分、沖縄などの地方都市を拠点する。浜松も負けてはいられない。
○…参入2年目の今季西地区で2位の好成績を収めた高松ファイブアローズには、浜松大OBフォワードのアイザック選手と浜松大コーチを5年間務めた青木幹典ヘッドコーチが在籍する。常勝エヴェッサの人気プレーヤー波多野選手の静岡県“凱旋(がいせん)”試合もあるだろう。静岡県勢の活躍にもbjリーグを身近に感じながら、単独ホームタウン「浜松フェニックス」ぐらいの勢いで、浜松アリーナをチームカラーの赤で埋めてほしい。
(4/25 掛井一也)