○…北京五輪の出場を決めているサッカーのU-23(23歳以下)日本代表は、フランス・トゥーロン国際大会を4位で終えた。8カ国のU-23代表で争った大会の3位決定戦敗退を伝える静岡新聞に掲載された反町康治監督(清水東高出)の顔つきは、まさに「厳しい」ものだった。2試合連続でPK戦負け。「『勝てたゲーム』勝負強さ欠く」「土壇場の失点、勝利逃す」。紙面の見出しも手厳しかった。オランダ、フランス、チリ、イタリア、コートジボワールの強豪相手に、合計得失点差ゼロはうなだれる成績ではないと思うが、「(1次リーグ突破後は)五輪に出場する国には勝てなかった。この現実を受け止めないといけない」。指揮官の言葉は表情同様に重かった。
○…1次リーグはA組でオランダ、フランス、チリと対戦した。初戦で五輪出場を決めているオランダを1-0で下すと、2戦目は昨年まで4連覇の地元フランス(U-21)を2-1で退けた。最終戦のチリには0-2と封じられたが、グループ2位で4カ国による決勝トーナメントに進出。初戦の準決勝はB組1位のイタリアにスコアレスドローの末、PK戦4-5で落とした。コートジボワールとの3位決定戦は後半37分に逆転しながら、ロスタイムに2-2に追い付かれてのPK戦3-4で敗れた。PKを外したDF水本裕貴選手(ガンバ大阪)は「五輪なら3位と4位では全然違う」と険しい表情だったとある。表彰台とメダルを得るか、逸するか、本番では天国と地獄ほどの差だろう。
○…準決勝は“PK要員”の役割も担って終了間際に出場したMF水野晃樹選手(セルティック、清水商高出)がPKを阻まれた。「申し訳ないでは済まされない。決められなかったのが、今の自分の実力」。静岡新聞に自らを責める言葉が載った。素早いテンポでパスをつなぎ、イタリアに主導権を渡さなかったという。「内容では負けていなかっただけに勝ちたかった」(DF青山直晃選手=清水エスパルス)、「いい試合だった。得るものが多かった」(反町監督)の談話は、2日後の3位決定戦に雪辱を期す決意表明でもあったはずだ。
○…「良かったのは、これが五輪本番でなかったこと」(MF本田圭佑選手=VVVヘンロ)、「1点を争うゲームは北京でもある」(反町監督)。本番の前哨戦ともなった国際試合で浮き彫りとなったのは、静岡新聞記事の言葉を借りれば「競り勝てない日本の姿」であり、「五輪への厳しい現実を突き付けられ、トゥーロンの戦いは終わった」のである。日本の過去最高成績はFW中山悟志選手(当時ガンバ大阪)が得点王になった21歳以下で争った2002年大会の3位。6大会ぶりの「世界トップ3」を目前で逃がしてしまった。
○…前回のアテネ五輪は1次リーグ2戦目でイタリアに2-3で敗れ、最終戦を待たずに1次リーグ敗退が決まった。アテネの3年前の世界ユース選手権も1次リーグ敗退。世界ユース準優勝、シドニー五輪ベスト8のチームと比較され、「谷間の世代」とまで呼ばれた。ペナルティーエリア内の動きや精度の差に加え、心身のたくましさも不足が指摘された。アテネ五輪の“終戦”に静岡新聞記事は「屈辱の経験をどれだけ生かすことができるか。真価はこれから問われる」と結んだ。
○…仮にアテネ世代が「谷間」であるならば、北京世代は右肩上がりでなければならない。繰り返された「U-23の屈辱」は、北京五輪までの2カ月で良薬に転じられるか。再び、「真価はこれから問われる」のだ。水野、青山両選手のほか、GK山本海人選手、MF本田拓也選手、FW岡崎慎司選手(以上、清水エスパルス)、MF上田康太選手(ジュビロ磐田)の静岡県勢代表に奮起を期待したい。
(5/29 掛井一也)