○…超大型と聞いて何を思い出すだろうか。「台風」「新人」…。そのどちらも冠することができるアスリートが“県内”に登場した。男子プロバスケットボールのbjリーグに今季から参戦する浜松・東三河フェニックス。浜松市内で行われた始動会見は米国人4選手を含む15選手が勢ぞろいしたが、何といっても注目は身長236センチの中国人センター孫明明選手。静岡新聞夕刊1面に掲載された集合写真で孫選手は、その頭を会場上部に掲げられた「始動記者会見」の看板に届かせていた。
○…始動会見の約1週間前、ひと足早く都内で孫選手の入団会見が行われた。在京の新聞、テレビ各社が集い、驚異的な長身が紙面や画面を通じて全国に流れた。かつて北米プロバスケットボールリーグ(NBA)のシカゴ・ブルズで、マイケル・ジョーダン選手は空中を駆けるダンクシュートで一世を風びしたが、孫選手が会見で見せたダンクシュートを各社は「つま先ダンク」「背伸びダンク」と呼んだ。
○…超大型選手といえば、今はNBAヒューストン・ロケッツの中国人選手、姚明選手=229センチ=が有名だが、筆者の若い時代は住友金属の岡山恭崇選手=230センチ=であり、中国・人民解放軍チーム(八一ロケッツ)の穆鉄柱選手=228センチ=だった。東京・新宿の中央ガードで遭遇した岡山選手が天井に背をかがめて歩く姿に息をのみ、穆選手は「ぼく、てっちゅう(僕、鉄柱)」の呼称が名が体を現すようで印象深かった。
○…高さ305センチに位置するゴールを狙う競技には、もちろん身長が大きな武器に違いないが、同時に俊敏な能力も求められる。他の選手の動きに遅れ、攻守の切り替えとは逆向きにコートを行き来するような姿が記憶に残る穆選手と、他選手と同様に動ける姚明選手やブルース・リーの主演映画出演でも知られるNBAロザンゼルス・レイカースのジャバー選手=219センチ=らとは雲泥の差である。
○…一方で、驚異的な身体能力で体格のハンディを乗りこえる選手も少なくない。その昔、静岡県営草薙体育館にやって来たNBA東西対抗戦で見たネイト・アーチボルト選手には魅了された。身長185センチながら強豪ボストン・セルティックスのスター選手で、ファンからは尊敬を込めて「タイニー(小さな)」のニックネームで呼ばれた。1996年にはNBA創立50周年記念で発表された偉大な50人の1人に選ばれている。
○…小兵といえば、2004年にフェニックス・サンズと契約し、日本人初のNBA選手となった田伏勇太選手が真っ先に思い浮かぶ。さすがに173センチの身長を能力と技術で補うには至らず、サンズとの契約も、翌年のロサンゼルス・クリッパーズとの契約も、わずか1カ月と短かった。秋田・能代工業高時代の田伏選手を、静岡県代表の取材で訪れた全国高校選抜優勝大会(ウインターカップ)で何度か見た。高校総体、国体と全国3冠を3年連続で達成した図抜けた動きを思うと、あと10センチ大きかったらNBAでも…と思うばかりだが、日本バスケットボールリーグ(JBL)に今季加入のリンク栃木ブレックスに入団し、5年ぶりで国内復帰を果たす。
○…フェニックスの開幕戦は10月18日、浜松アリーナでの仙台89ERS戦だ。プレシーズンマッチの一環で9月14日にはリーグ3連覇中で、中心選手に静岡学園高卒の波多野和也選手がいる大阪エヴェッサと対戦。レギュラーシーズンで大阪とは区分が東西に分かれるが、プロ野球でいうところの交流戦に当たる試合がホーム&アウェーで1試合ずつあるので、波多野選手の県内凱旋(がいせん)も楽しみだ。
○…田伏選手が加入したリンク栃木は、浜松・東三河フェニックスの前身オーエスジーフェニックス東三河のbjリーグ転籍に伴ってJBLに昇格した。10月5日のリーグ第3節では県営草薙体育館でレラカムイ北海道と対戦する。田伏選手と同時期に沼津学園高(現飛龍高)で活躍し、トヨタ自動車でチームメートでもあった加藤吉宗選手=202センチ=が昨季限りで北海道を退団したのは残念だが、田伏選手、波多野選手、そして孫選手の県内試合を楽しみにしたい今季の両リーグである。
(9/10 掛井 一也)
「だんまく」とはスポーツ大会で目にする応援用「横断幕」の通称。時に温かい声援、時に檄文(げきぶん)の横断幕にならい、静岡県内スポーツ界の出来事を中心に、折に触れた話題を取り上げます。