∋ 政財界では、遊泳術・得意技の一種として「じじ殺し」といいます。若年世代が、長老の域に近づいた実力者らに取り入り、「うい(可愛い、殊勝な)奴だ」と引き立ててもらうといった意味でしょうか。プロ野球参入をめぐる楽天とライブドア両社の勝負を外野から”観戦”していて、最後に明暗を分けたのは、じじ殺し度だったのではないか、などと感じました。
∋ ともに30歳代のベンチャー企業の社長が頻繁に登場しましたが、戦術はもちろん服装やスタイルから,言動まで好対照だったように思います。新球団のどちらかを選ぶのは、プロ球界のオーナーたちで、いってみれば「アンシャン・レジーム(旧体制)」を体現するような年配者です。ベンチャー企業の雄がともに譲らず、年配者の”寄り合い”に臨みました。新旧企業の対峙(たいじ)です。
∋ 「アナログ対デジタル」の側面もありました。楽天、ライブドアともにIT(情報技術)関連、インターネットを駆使して業績を伸ばしてきました。デジタル派です。その商売の仕組みを十分に認識しないアナログ世代からすると、浮利を求めているようにみえて理解しがたい。よく分からないから不安になり、異様な警戒を抱く。当初、「俺の知らない企業だ」などというオーナー側の発言が伝えられましたが、まさにそうした心理の反映ではなかったでしょうか。
∋ その警戒を解くために、いかに”刺激”を少なくして理解を得るかが、戦術として必要でした。典型的だったのが楽天の経営諮問委で、その顔ぶれたるやそうそうたるものでした。財界の大立者との付き合い、つまり安定感を強調したのでしょう。ここで「ダークスーツにネクタイVSジャケットにTシャツ」の争いにもなりました。正統性を重んじる世界では、ラフな服装はまだまだ浸透していないのではないかと思います。
∋ 小泉純一郎首相ばりに言えば、今回の参入劇は、まさに球界の「構造改革」にもつながる話です。変革の動きがあれば、抵抗勢力も出てくる。エスタブリッシュメント(既成の秩序)は、本来、防御的な性格を有する。今回の決着はその意味で、時代の波に洗われる球界秩序が命運を保ったものといえます。切れ味鋭い若い経営者が、エスタブリッシュメントの理解をより強く得て宿願を達成した図です。とはいえ、あくまで過渡的なものです。遠からず新しい秩序を真剣に具現化しなければならない事態がくる。その予兆は既にみえています。そしてその時、主導権を握るのはオーナー連ではもちろんなく、公共財としての球団という資産を育ててゆくファンです。
(鮟鱇)