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2004年「Webコラム一灯」

 強弁が切り捨てたもの

2004/11/14

  サマワの自衛隊員はどんな思いで聞いたでしょうか。期限が近づき、イラクへの派遣延長問題が焦点になっています。ファルージャでは米の総攻撃が展開され、情勢は激しく動いていました。そんな中でのイラク復興支援特別措置法が定める「非戦闘地域」の定義をめぐる国会のやりとり、小泉首相の答弁には唖然としました。


  党首討論で問われ、「自衛隊が活動しているところが非戦闘地域です」と答えました。相手は野党第一党の岡田民主党代表です。なのに、ていねいに説明しようなどという姿勢は、かけらもみえません。木で鼻くくるというのか、突き放すというのか。とにかく荒っぽい投げやりな言葉でした。少なくとも、一国の総理にふさわしい物言いとは思えませんでした。


  詭弁強弁に、さすがに与党内でも批判が聞かれました。ご当人、いささかもひるまず、記者団に「適切な答弁だったと思う」「おかしかったら問い返せばいいんですから」と開き直ったと記事にあります。パフォーマンス宰相一流の「ワンフレーズ・ポリティクス(一言政治)」と片付けられる問題ではありません。


  国の政策に従って隊員は派遣されました。武器に頼る活動ではありません。「人道支援」の使命を黙々と果たしています。現地住民の理解はあるとはいえ、悪意を抱く反対勢力は間違いなく存在します。ロケット弾が撃ち込まれコンテナを貫通する。生命の恐怖がないとは言い切れないでしょう。答弁しながら、首相が隊員個々のそんな労苦、身内を送り出した家族の心情を脳裏に描いていたとは、とても思えない。13日夜には、第4次派遣部隊が出発しました。混迷の度が深い今回は殊に、留守を預かる人々の不安は大きいでしょう。


  武装勢力に拉致され、むごい殺され方をした青年の両親は、支えてくれた人々に対し心労をかけて、と心からのお詫びを表明していました。激励に付き添った地元の市長に対し父は、「一介の青年のため、国を挙げて対応していただきありがとうございました」と感謝の言葉を述べたそうです。張り裂けんばかりの胸中の思いを抑え、まず詫びと礼を言う両親に、善良な市民の悲嘆の深さを想像し、やりきれませんでした。首相の「ワンフレーズ」との落差に暗然とします。


  国家の最大の責務は、国民の生命・財産を守ることです。だからこそ、首相は2度までも北朝鮮を訪れ、拉致被害者の消息の確認と帰国を迫ったのだと信じます。そうならサマワだろうがファルージャだろうが、「自衛隊のいるところが非戦闘地域だ」などという粗暴な論理が生まれる余地はないし、適切な答弁だったと自賛する無反省もありえないでしょう。そんな言葉に、首相の生命感覚が反映しているとすれば、悲しいことです。国民は、指導者としての彼に期待を寄せるしかないのですから。「一介の青年のために-」という父の言葉に込められた重い感情を再び反芻するのです。       

(鮟鱇)




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