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2004年「Webコラム一灯」

 母が見抜いた独裁国家の恐怖

2004/11/18

 

  以前、北朝鮮に招かれた日本の有力政治家が「金王朝」のファンになって帰ってくるということがありました。歓迎ぶりが徹底していたためですが、殊に巨大なマスゲームには、すっかり参ってしまうようでした。スタジアムでのまさに一糸乱れぬ壮大な演出は、かの国の独壇場でありましょう。一種の洗脳かとも疑いました。

 

  韓国で開かれたアジア大会の話題をさらったのは、例の美女軍団でした。選りすぐった妙齢の女性の集団がスタンドで応援を繰り広げる。競技の展開に歓喜、落胆する表情は、それこそ眉の動き一つまで”統制”がとれている。民族衣装は実に華麗でしたが、この軍団の一糸乱れぬさま、その虚飾を不気味に感じたものです。

 

 ∋ 日朝実務者協議の日本側代表団が、拉致被害者の安否再調査に関する物証を持ち帰りました。十分な検証はこれからですが、外務省が家族に示した被害者7人についての個別の聴取結果のうち北朝鮮側の説明には、一読して「そんな子供だましのような」と思える矛盾が多い。それが、元首が約束した”精査”の結果なのです。

 

  目を引くのは、多くの”人工的な表現”です。「担当指導員」とはつまり、監視人のことでしょうか。頻繁に登場するところから、被害者がどんな状況に置かれたか、想像がつきます。「社会環境の教育」、「現実体験」、「語学養成」などには、強要された”指導”の様子が凝縮しているようです。よほど火急だったのか、「精神的安定」のための「招待所」生活と移動。こうした言葉ひとつにも痛ましい思いが募ります。

 

  13歳で連れ去られた横田めぐみさんは、拉致問題の悲惨さ、残酷さの象徴です。父親の滋さん、母親早紀江さんは、一貫して救出運動をリードしてきました。世論を動かし、政府を変えました。夜、テレビに生出演しているかと思えば、早朝には街頭の署名集めに立っています。北朝鮮が、この不屈の両親を強く意識していることは想像に難くありません。今回、めぐみさん死亡の物証として「遺骨」だというものを提出しました。受け取った3葉の写真のコピーを横田さん夫妻は公開しました。

 

  案の定、合成の疑いが出てきました。成人してからの1葉、縦位置の人物写真の影と樹木の影が反対方向に伸びているというのです。これまでも疑惑の絶えなかった工作、操作を思うと、意図が働いていると考えざるを得ません。掘り返して火葬したという遺骨にも、不自然さがつきまといます。

 

 ∋ 中学生当時とおぼしき1葉は、制服姿のようです。白いブラウス、紺のジャンパースカートは、日本でもよくみられるいかにも中学生らしいものですが、屈託ない笑みはそこにありません。不安げな表情で、カメラに向けられた視線にはおびえが見て取れると、早紀江さんは感想を述べています。

 

 ∋ 「泣きながら連れて行かれ、知らない所で、寂しいのをこらえた顔をしている」。母は、かわいそうでならない、思わず泣いてしまったと言います。間違いないでしょう、めぐみさんの当時の過酷な状況を物語る写真です。だれよりも子の思いを知る母の目は、見え透いた嘘を許しません。助けてください、拉致問題への関心を失わないでください、と訴えています。父は14日で72歳、母69歳。4半世紀以上も待つ両親です。

(鮟鱇)




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