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2004年「Webコラム一灯」

 大使のたしなみ

2004/12/03

  下田市は1989年、マイケル・マンスフィールド元駐日米大使に特別名誉市民の称号を贈りました。2001年に98歳で亡くなっていますが、親日家の大物大使は在任11年余、黒船祭に9回参加するなど、日米友好の原点の地として下田を深く愛したことで知られます。

 

  生前、親交のあった人々は、その飾らない人柄に魅せられました。招き入れた部屋で、自らコーヒーを淹れてもてなしてくれたエピソードを挙げます。緊張が一気にほぐれ、アットホームな雰囲気に包まれた、と懐かしむのです。その”歓迎”を心に刻んだ人々がマンスフィールド流のお返しの形で友好を一層はぐくんできただろう軌跡を想像します。

 

  「カメラを持った駐日大使」で有名なのが、ハワード・ベーカー氏です。ボーイスカウトに入った12歳当時からの趣味だといいますから、年季が入っています。紹介記事によると、全米写真家協会国際賞を受賞するほどで、玄人はだし。アンティークカメラを収集し、暗室のにおいを好み、ご本人いわく、「日誌代わり」に生活の断面を記録しています。その”プロ”が日本の表情をとらえています。

 

 ∋ 日本最大の国際通信社、(社)共同通信の東京・東新橋の本社ビルで個展「憧憬-ベーカー大使の日本」を開いています。着任3年半で23都道府県を回った際に撮った作品から40点近くを選んだそうです。風土、人々の営みなどの細部に緻密な視線を注いでいるのが分かります。動物の一瞬の動き、時計などの静物、それぞれに味わいがありますが、撮影者本人は、北海道でとらえた丹頂鶴の作品を推奨しています。開催あいさつの中で大使は、日本には野生や自然をいつくしむ思想があることに触れています。

 

 ∋ マンスフィールド氏は、「日米」は「世界で最も重要な二国間関係」だとの持論をことあるごとに表明していました。単に任地だからというのでなく、日本という「国柄」を愛し観察した結果の言葉でしょう。ベーカー氏は、「私の写真は芸術作品である、などと言うつもりはありません」と前置きし、「こういう眼で世界を見ているのだということを」一緒に見てほしいのだと述べました。79歳の含蓄ある誘いです。

 

  共感は、お手軽な仲間意識やいたずらな称賛から生まれるものでなく、実は厳しい認識の果てにあるものでしょう。行き違いや軋轢(あつれき)を超えて生まれる友情こそ揺るがないものだと思います。先人たちはそのために種を蒔いてきたのでした。ベーカー氏は近く退任し、テキサス時代からのブッシュ大統領の親友だというトーマス・シーファー氏が後任に起用されます。日米関係にこれまで関与した実績はない、という報道がありました。成熟した日米関係をさらに深めるため、次期大使がどんなたしなみをみせてくれるか、注目したいものです。

(鮟鱇)




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