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2004年「Webコラム一灯」

 「学生さん」どうした

2004/12/12

  「学生さん」。ひと昔前までは、大概の主要都市に学生街があり、商店主や近所の住民らが、親しみを込めてそう呼んだものです。最近の様子には疎いのですが、どうでしょうか。青春を謳歌する若人をうらやむ気持ちと、知性・教養に対する幾分の尊敬、そして何より近い将来の社会を主導的に担う世代への期待がくみ取れました。

 

  下宿のおばさんが、なにくれとなく世話を焼くのに対し、蛮(ばん)カラを気取る「学生さん」は恥ずかしがったりしていました。大量進学時代が訪れ、大学生が珍しくなくなったのに合わせて、インテリ予備軍も変質したようです。全般に素直でおとなしくなった、と聞きます。よれよれの服も意に介せず、口角泡の議論に熱中する、などはまれだと聞きます。就職試験のシーズンに典型的ですが、高級なファッションに身を包む、冷静かつスマートな学生「紳士」「淑女」が多いと見受けます。

 

  昔気質を残すのが、「体育会系」なのでしょうか、企業の新卒採用でも人気だといわれます。礼儀正しく、忍耐強い。向上心が目覚ましい。独特の人間関係になじんで家族意識が旺盛、組織への忠誠心でもまさる。いわゆるスポーツマンシップが身についた若者は、公平、公正、正義へのこだわりも知られます。

 

  大学スポーツは、プロに比べれば露出は少ないとはいえ、人気の選手にはやはり誘惑も多いでしょう。プロ球団から金銭を受けていた選手の不祥事が話題になりました。おとな社会は、虎視眈々、広告塔になりそうな有望素材に狙いをつけています。よほど気を引き締めていないと、自分を律してゆくことが困難となります。臍(ほぞ)をかむのは当人ばかり、ということになりかねません。非情な世界だとはいえます。

 

  大学野球の強豪チームの選手たちが、電車内で痴漢行為をしたとして強制わいせつ未遂容疑で逮捕されました。高校時代、甲子園大会に出場して名を知られた選手も含まれていました。大学スポーツ選手による性犯罪事件が続発していますが、何より卑劣だと思うのは、彼らがいずれも集団で行動していることです。それでなくとも恐怖におびえる弱者に、屈強な男どもが大勢で立ちはだかる。恐らく個々には罪の意識が薄いのでしょう。そこが幼いのです。

 

  取り返しのつかない過ちになります。汚名をそそぐことは容易ではありません。イベント企画サークルの女子大生集団暴行事件は、地裁でも高裁でも極めて厳しい判決が出ています。「被害女性の人間性を無視し、性的快楽の道具のように扱った」という指摘を「人間としてあるまじき下劣かつ醜悪」とされた被告は、どのように受け止めたでしょうか。判決の余韻さめやらぬうちに、大学スポーツ選手による事件が起きているのです。

 

  競技を問わず、技量を磨くためには孤独な鍛錬が積み重ねられます。それを耐え抜いて、スポーツマンシップが培われるのです。「千万人といえどもわれゆかん」こそ、運動選手らの魅力です。ひとり向上への”志”を抱くからこそ、競技者としての完成もあるはずです。指導者たちは、まずその志を確認するすべを教えてほしい。合宿など集団での練習生活が、選手たちの成長に資するものだという本来の意義を徹底してほしい。ちやほやする結果が、選手本人の将来を損なうのは間違いありません。「学生さん」。この呼びかけに、周囲が以前は込めていた願いを思い出してほしいのです。

 

(鮟鱇)




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