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2004年「Webコラム一灯」

 富士山の地主さん

2004/12/18

  寒さが増してくると、景色にめりはりがついて、早朝、出勤の途次に安倍川の橋上から眺める富士山の姿につい見惚れます。厳しい冬にこその静岡の味わいです。オフィスでは、同僚に声をかけ、しばしパソコンから目を離して社屋の窓越しに美しい山容を望むことを薦めます。

 

  全国各地から同じ仕事に携わる仲間が集まる会合の楽しみは、方言が飛び交う酒席のやりとりで、それはにぎやかなものです。それぞれにお国自慢を披露し合ううちに、カラオケでふるさとを歌いこんだ曲をうなるころは、まさに宴たけなわです。『天城越え』の難しい節回しに恥をしのんで戻ると、ご当地ソングの歌唱の評価などさらになく、「おたくは、富士山があっていいなぁ」とうらやましがられるものです。首都圏から単身赴任中の知人は、かねて登頂を念願しており、この夏、ついに家族を呼び寄せて達成したと自慢していました。

 

  霊峰といえば、当地では富士山です。日本一の標高もさることながら、なんとも霊妙な美を備えた山なのです。古来、信仰の対象となってきたのも当然です。徳川家康が、八合目以上を富士山本宮浅間大社に寄進したことを示す古文書があるそうです。その保有権をめぐっては、昭和49年に最高裁で、浅間大社のものとする判決が出ていましたが、国側の手続きは行われていませんでした。

 

 ∋ 17日付の静岡新聞朝刊では、その山頂問題が決着したとの記事が1面トップを飾っていました。八合目(3250㍍)以上の約400万㎡のうち380万㎡を浅間大社の私有地だとする無償譲与に関する文書が、最高裁判決以来30年にして国と神社側の間で取り交わされたのです。霊峰の”地主さん”が、名実ともに私有したということです。

 

 ∋ 山頂部分の静岡、山梨両県境の確定などを待って、登記手続きを行うことになるようですが、再来年の平成18年は、806年に坂上田村麻呂が勅命を受けて現在地に大社を移した遷座から1200年の節目の年となります。記念行事の何よりの目玉となりそうです。

 

 ∋ ご多分にもれず富士山も環境破壊が懸念されています。2週間前も大沢崩れの土石流が報道されていました。入山による問題も少なくないようです。世界遺産に登録しようという動きがあります。「日本一の山」と歌われ親しまれている「国のシンボル」を守ってゆく必要は高まっています。地主さんを中心にした連携が、その弾みになるでしょう。ところで告白するなら、五合目あたりまでは頻繁に訪れるのに、山頂はまだ極めていませんでした。木花開耶姫(このはなのさくやひめ)に申し訳が立ちません。

(鮟鱇)




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