ShizuokaOnline
オリジナルコンテンツ

ShizuokaOnlineのオリジナル企画。旬な話題を動画を交えてレポート。New! 
「大人」の読者にじっくり味わってもらいたいニュースが満載。「寄稿・わが至福の時」も好評です。
静岡県内の大学の話題は「キャンパス・ナビ」でチェック!
県内トップアスリートに迫る動画インタビューをお届けします。 
子育て世代に役立つ話題満載の交流広場です。
最新情報やニュースをケータイサイトでもチェックできます。お得なグルメ情報も掲載!

ポッドキャスティング

47News
家康囲碁道場
静岡ぐるめ探検隊
ShizuokaOnline(静岡新聞社・静岡放送オフィシャルサイト) > Webコラム一灯 > 2004年「Webコラム一灯」

2004年「Webコラム一灯」

 土手の花見

2004/10/22

 ∋ 各地に悲惨なつめ跡を残した台風23号の報道に接して、かつて取材でうかがった狩野川台風(1958年9月26日)の被災者の体験談を思い出しました。家の屋根にしがみついたまま濁流に押し流され、最後は立ち木につかまっていたところを救出された方のお話です。子どものころの恐怖の記憶は脳裏に深く刻まれたままのようで、半世紀近くたった今 なお、「川に近づくのが怖い」「毎年9月が来ると何か落ち着かないような、嫌な気持ちになる」と言っていたのが印象に残っています。

 

 ∋ 真っ暗闇の中、40人近い高齢の乗客が観光バスの屋根で一夜を明かした京都府舞鶴市。市域の大部分が水没した兵庫県豊岡市。17㍍という記録的な高波に見舞われ、破壊された海岸堤防が民家を直撃した高知県室戸市。富山港沖では静岡市の国立清水海上技術短期大の実習生も乗船した海王丸が、「海の貴婦人」の面影もなく、荒れ狂う海に 翻弄されました。全国で600カ所に上ったという土砂崩れでも、多くの命が犠牲になっています。

 

 ∋ 「床下まで水がきたと思ったら、次の瞬間には胸の辺りまで水に浸かっていた」。豊岡市民のインタビュー映像に、狩野川台風被災者の体験談が重なります。堤防の決壊し た川が街をのみ込む速さは、今も昔も想像を絶するようです。農地が宅地に変わり、道がアスファルトで覆われた現代の方が、むしろ土地の保水機能や調整機能が低下している分だけ、 水害に弱くなっているとの指摘もあります。

 

 ∋ 今年10個目の本州上陸。10月に入ってからだけでも2個目。台風に刺激された前線の活動で、上陸前から長く降り続いた雨。内陸部を縦断するという”最悪”のコース 。記録尽くめの気象条件が被害拡大の要因の1つには違いないでしょうが、被災者の何人かは報道陣の問いかけに、「これだけの高波は室戸台風以来」「ここまでの浸水被害は30年ぶり」といった表現で、以前にも同様の体験をしたことを明かしていました。住民の経験は、地域の防災対策に生かされてこなかったのでしょうか。

 

 ∋ 本県も含め、9日の台風22号の被害が大きかった地域の方が、自治体の避難勧告などの対応が迅速だったと伝えられているのも気になります。行政だけではありません。「他人事だと思っていたけれど、いざ自分が被害に遭ってみると…」。避難所の前から水に浸かった自宅を眺め、そうつぶやいた被災者の姿がテレビに映し出されていました。時間の経過 とともに薄れる教訓。当事者になってみて初めてわく実感。大きな犠牲を代償に、今回もまた「防災」の難しさが浮き彫りとなりました。

 

 ∋ 「災害という『嫌なこと』を常に意識しろといっても無理。知らず、知らずのうちに、それもできれば楽しく、がポイント」。防災意識の向上に心を砕く富士常葉大環境防災学部の小村隆史 専任講師に以前、「土手の花見」の話を聞いたことがあります。先人たちは水防のとりでである土手に桜を植えました。それは、春に花見客を誘い、冬の霜で緩んだ 堤防の土を、梅雨の出水期に備えて再び踏み固めさせる狙いがあったといいます。

 

 ∋ 住民が楽しく集う花見は、地域の連帯感の醸成にも役立ちます。高齢社会を迎えて、地域コミュニティーの強化は防災面からも必要性が強調されているところです。大きな被害が出ると、河川改修や地滑り、高潮対策などの施設面での対策強化に目が向きがちですが、土手に桜を植えた先人の知恵にこそ、見習うべきも のがあるように思います。

(鯔)

※Webコラム「一灯」は、ShizuokaOnline.comを運営する静岡新聞社・静岡放送 総合メディア局のスタッフが執筆するオリジナルコラムです。時事問題を中心にさまざまな話題を取り上げていきます。




メール メールで記事を紹介 印刷 印刷する



[特集]


ここから関連ニュース・バックナンバー

バックナンバー

言葉の沃野を 2004/12/31  
凶事の連鎖 2004/12/30  
津波 東海地震の巣に在って 2004/12/29  
tsunami スマトラ沖からの恐怖 2004/12/28  
子どもの風景04 2004/12/24  
母の涙(続)-娘を奪った者に 2004/12/21  
富士山の地主さん 2004/12/18  
母の涙-この加虐的な世 2004/12/16  
「学生さん」どうした 2004/12/12  
ジーンズフィフティー 2004/12/08  
大使のたしなみ 2004/12/03  
週刊地震新聞200号 2004/11/30  
埼玉-藤枝  地域とともに(続) 2004/11/29  
カズが、ゴンが、 地域とともに 2004/11/25  
韓流余聞 2004/11/22  
母が見抜いた独裁国家の恐怖 2004/11/18  
強弁が切り捨てたもの 2004/11/14  
蜘蛛の足 2004/11/10  
風の盆、大道芸 2004/11/08  
田臥勇太というドリーム 2004/11/05  
「楽天VSライブドア」余聞 2004/11/04  
むごい、あまりにむごい 2004/11/01  
無垢の生命が教えるもの 2004/10/28  
父祖の地 2004/10/26  
ノー・ノー法相 2004/10/21  
魂が聞き耳をたてる(続) 2004/10/17  
心が被災する 2004/10/13  
台風22号 悪魔の咆哮 2004/10/12  
魂が聞き耳をたてる 2004/10/11  
実物感覚が忘れられていませんか 2004/10/10  
花博リピーター 2004/10/08  
イチローを知りたい 2004/10/05  
秘すれば美 2004/10/01  
閣僚のホームページ 2004/10/01  
冷血(?)の涙、変人の友情 2004/09/29  
古田敦也の涙 2004/09/25  
「おまち」がなくなる 2004/09/24  
「象牙の塔」発「知の連携」 2004/09/23  
カジュアル・フライデー 2004/09/19  
その名は山葵(下) スローフード紀行 2004/09/18  
その名は山葵(中) スローフード紀行 2004/09/17  
その名は山葵(上) スローフード紀行 2004/09/16  
”現場”が泣いている(下) 2004/09/14  
”現場”が泣いている(上) 2004/09/13  
稲むらの火 2004/09/10  
貧困なるクルマ社会 2004/09/06  
イワシが消える? 2004/09/03  
9月1日でなくてもできること 2004/09/02  
アテネ・インソムニア 2004/08/30  
球界黒い霧 2004/08/27  
メダルラッシュの先には 2004/08/24  
井上康生の憔悴 2004/08/21  
文豪の宿-新聞小説史を楽しむ(5)完 2004/08/20  
超、気持ちいい 2004/08/20  
文豪の宿-新聞小説史を楽しむ(4) 2004/08/19  
文豪の宿-新聞小説史を楽しむ(3) 2004/08/18  
文豪の宿-新聞小説史を楽しむ(2) 2004/08/17  
文豪の宿-新聞小説史を楽しむ(1) 2004/08/16  
戦争を知っている子どもたち 2004/08/15  
史上最悪の事故 2004/08/14  
エーゲ海の風 2004/08/13  
サッカーミュージアムを見る 2004/08/09  
たそがれのスパイ 2004/08/05  
権現様の古時計 2004/07/31  
世界一の権力者選び 2004/07/30  
皆さまの公共放送、ですか 2004/07/26  
118校の頂点 2004/07/23  
曽我ひとみという人生 2004/07/20  
稚気かわいからず 2004/07/17  
華氏911 2004/07/16  
新庄剛志のおだっくい 2004/07/15  
人生いろいろ選挙 2004/07/12  
団塊は朽ちず 2004/07/08  
ビキニ、イラク、沼津 2004/07/08  
カリスマとしての俳優 2004/07/05  
子どもたちの荒野 2004/07/01  
ただ消え去るのみ 2004/06/30  
ベッカムは屈しない 2004/06/28  
指導者たるもの 2004/06/24  
最後の元老 2004/06/24  
猛牛あえぐ 2004/06/22  
はるかなる20世紀 2004/06/16