ShizuokaOnline
オリジナルコンテンツ

ShizuokaOnlineのオリジナル企画。デジ記者が旬な話題を動画を交えてレポートします。
「大人」の読者にじっくり味わってもらいたいニュースが満載。「寄稿・わが至福の時」も好評です。
静岡県内の大学の話題は「キャンパス・ナビ」でチェック!
北京五輪出場の静岡県勢を特集(動画インタビュー)。 更新!
子育て世代の情報・交流の広場です。
最新情報やニュースをケータイサイトでもチェックできます。お得なグルメ情報も掲載スタート!
志らべのいっピン!

ポッドキャスティング

47News
家康囲碁道場
静岡ぐるめ探検隊
ShizuokaOnline(静岡新聞社・静岡放送オフィシャルサイト) > Webコラム一灯 > 2005年「Webコラム一灯」

2005年「Webコラム一灯」

 遺跡の声を聞く

2005/12/29

  吉村作治早稲田大学教授は、エジプト考古学の泰斗で、遺跡の保存修復に貢献しています。吉村さんの小説『ナイルの暗号』は、遺跡の盗掘をストーリーの軸に据えています。歴史の貴重な所産が、あばかれ、荒らされてきた過去を思うと、暗然とした気分になります。もし、そのまま保存されていれば…。

 

  エジプトのカイロ考古学博物館を訪れたことがあります。図鑑などで鑑賞し、生涯一度は実物を、と念じていた文物を間近にした時は興奮しました。展示品の多さに圧倒され、ナイルの文明の偉大さをしのびました。ツタンカーメンの黄金のマスクはもちろん最大の呼び物で、警備は厳重、写真撮影も禁止されていましたが、歴史を証言する出土品の数々が、日本の感覚からすると無造作にすらみえるほど大様に陳列してあるのには驚きました。

 

  王家の谷で知られるルクソール市内にも博物館があります。展示の規模からすれば、カイロの比ではありませんが、スペースにゆとりがあり、発掘された品々を展覧するコースの設定なども配慮が行き届いていました。王や従者、民衆の壮大な物語を数千年を経て想像するには格好の施設でした。遺跡は、盗掘という人間の愚行との戦いを超えて現代人に語りかけるのです。

 

  アフガニスタンの原理主義勢力タリバンによって、バーミアンの大仏立像など石仏群が破壊された時の映像は、今も脳裏に焼きついています。人類の知恵と祈りの営為は、爆薬によっていとも簡単に葬り去られたのです。画家の平山郁夫さんらは、アフガンから流出する古美術品を国連教育科学文化機関(ユネスコ)が収容し、政情安定後に返還する計画「文化財赤十字」を提唱していました。先日の静岡新聞文化欄には、米国在住の日本人アーティスト、ヒロ・ヤマガタさんが、破壊の行われた壁面にレーザー光線を照射して石仏の画像を蘇らせるプロジェクトを発表したと伝えていました。現代の科学を活用する新たな試みです。巨額の費用は、米国内の人脈を生かし、寄付を募るといいます。

 

  戦火が、遺跡、文化遺産の最大の脅威であることは論を待ちません。政治の闘争が武器の応酬に至り、文化財が巻き込まれ消失してゆく歴史をみてきました。平和の恩恵を享受する国は、人間の知恵の所産を守ることに貢献できます。例えば平山さんの理念は、紛争当事国にも説得力を持つでしょう。壁画で有名な北朝鮮の高句麗古墳群の世界遺産登録に尽力したとして、平山さんは韓国政府から「修好勲章興仁章」を授与されています。

 

  先ごろ、バグダッドのイラク国立博物館の職員2人が、ユネスコ文化遺産保存信託基金の援助で来日し、静岡市の県埋蔵文化財調査研究所で文化財の保存修復研修に励んだことがありました。当時の記事によれば、メソポタミア文明の文物を多数所蔵しているが、やはり戦争で大規模な略奪に遭ったりして、一般公開は今も中止されたままだそうです。戦争当事者は、勝利のために相手国の文化を破壊し尽くすことを狙います。21世紀の今も、こうした危機は各地にあります。遠く離れた私たちは、無力でしょうか。文化保存という形での支援は可能です。

(鮟鱇)




メール メールで記事を紹介 印刷 印刷する



[特集]


ここから関連ニュース・バックナンバー

バックナンバー

ジャック・アンダーソンの死 2005/12/22  
日本のフェイルセーフ 2005/12/19  
桜吹雪は拝めたか 2005/12/15  
カナリアを追う 2005/12/12  
砂上の楼閣 2005/12/08  
町から子どもが消える? 2005/12/04  
国技の無国籍化 2005/11/30  
偽造の重罪 2005/11/24  
古書に浸る 2005/11/23  
書" 道" 2005/11/19  
とんぼの里 2005/11/12  
ハママツは世界ブランド 2005/11/08  
オリオンズよ 2005/11/03  
「簡潔明瞭」の陥穽 2005/10/28  
国をつくるということ 2005/10/21  
26番目の選手 2005/10/18  
4000年の歴史 2005/10/14  
がれきが語るもの 2005/10/12  
匠を見よ 2005/10/09  
”盟主”の責任 2005/10/06  
二足のわらじ 2005/10/02  
凛然たる女性たち 2005/09/29  
おだっくい超世代 2005/09/25  
阿波の傑物 2005/09/22  
読書民族の美学 2005/09/16  
「審判済んで夜が明けて」 2005/09/12  
シネマ&テアトル 2005/09/08  
「地気」と芸術 2005/09/04  
カトリーナの魔手 2005/09/03  
大学サバイバル 2005/08/29  
本のにおい 2005/08/25  
沈黙する知性 戦無派の物思い(7完) 2005/08/22  
言葉の漂流 戦無派の物思い(6) 2005/08/20  
「戦い取るもの」 2005/08/19  
痛みの先に 戦無派の物思い(5) 2005/08/16  
戦争の時効 戦無派の物思い(4) 2005/08/15  
単「純化」 戦無派の物思い(3) 2005/08/14  
コイズミが来た 戦無派の物思い(2) 2005/08/12  
戦後還暦解散 戦無派の物思い(1) 2005/08/11  
時代の気分は「情けない」 2005/08/07  
宇宙ラーメンを食べたい 2005/08/04  
都市難民 2005/07/31  
それでも天下りですか 2005/07/28  
野茂にノー・モアはない 不死鳥よ(下) 2005/07/26  
カズはピッチに 不死鳥よ(上) 2005/07/26  
ソフト・ターゲット 2005/07/22  
野球は文化か 2005/07/17  
ネポティズムという宿痾 2005/07/14  
情報源の秘匿 2005/07/12  
暴力の連鎖 2005/07/08  
オイルショック再び? 2005/07/06  
公団、天下り、談合 2005/07/02  
骨太と鉄面皮 2005/06/30  
”らしくない”人々 2005/06/25  
貪欲なるストライカー 2005/06/23  
「金時持ち」遥か 2005/06/19  
家族の絆 2005/06/16  
総中流の幻想 2005/06/12  
宮本という名作 ドイツ切符(下) 2005/06/10  
ジーコの意地 ドイツ切符(上) 2005/06/09  
”W杯”ゴール目前 2005/06/04  
綿々、技の伝承 2005/06/02  
蓮池薫さんのライフワーク 2005/05/29  
病診連携 2005/05/26  
破壊の行き着く先 2005/05/21  
戦争の下請け化 2005/05/19  
デビッド・リーンが描いたもの 2005/05/15  
情報過疎の戦場 2005/05/12  
徳富蘇峰と文学の森 2005/05/08  
力士・片山の夏 2005/05/05  
三島由紀夫の小遣い帳 2005/05/03  
田中一村 植物を描き尽くす 2005/05/01  
融和する美-花の不思議 2005/04/29  
男のスーツ 2005/04/27  
M&A劇場-額に汗する者は 2005/04/24  
M&A劇場-従業員さまいずこ 2005/04/22  
M&A劇場-団塊の観客たち 2005/04/20  
「舞姫をたどる」 2005/04/17  
異文化同化 2005/04/14  
“聖地” の憂鬱 2005/04/10  
フットボール 日独の紐帯 2005/04/07  
水の風景 2005/04/02  
内なる国際化 2005/03/31  
「方言万歳」 2005/03/26  
「万博 35年後」 2005/03/21  
「万博 35年前」 2005/03/20  
伝説の豪腕-持続する志 2005/03/17  
適材適所 2005/03/13  
球春来たる 2005/03/10  
スターの染み入る言葉 2005/03/06  
「父」の崩壊 2005/03/03  
大いなる二番手 2005/03/01  
黒はんぺん賛歌 2005/02/26  
「情」と「効率」 2005/02/23  
ベビー81 2005/02/19  
17歳の閉塞 2005/02/16  
信用無用 2005/02/12  
ヒーローは燃え尽きない 2005/02/10  
はとバスご一行様御成り 2005/02/06  
楽天的野球論 2005/02/02