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2005年「Webコラム一灯」

 戦後還暦解散 戦無派の物思い(1)

2005/08/11

  まさかと思っていた「郵政解散」が現実となりました。9.11総選挙に向かって、05年夏は慌しいことです。小泉純一郎首相による「思い込み解散」は、政界すずめによって勝手に命名されています。オーソドックスにゆけば郵政解散ですが、自爆解散、八つ当たり解散、道連れ解散、江戸の仇を長崎で解散…などとにぎやかです。60年を経る日本の戦後を概括する節目の年に遭遇したのですから、「戦後還暦解散」がいいのではないか、と推奨します。日本は久しく、政治、経済、社会、文化各分野で慢性疲労状態にあるといわれてきました。行き詰まり打開の期待を背負って「60年目の今」を率いるのは、強い個性、改革志向の総理です。この年の選挙は何かのめぐり合わせだと思います。

  戦前・戦中・戦後派と区別して、「戦無派」という言い方があります。これまで国づくりの先頭に立ってきた世代の多くがそろそろ第一線を退きつつあります。第二次大戦後に生まれた戦無派が社会の各層で多数を占めるというのは、単に数の問題ではなく、日本の国の近未来のありようにもかかわる大きな転換です。

  自己の精神史に原体験としての「戦争」を持たない世代の思想、行動が社会を律してゆく時を迎えたのです。戦場で敵と対峙し武器を使った、生死の境をさまよった、空襲の恐怖に身をさらした、家族を失った、焦土で飢えに苦しんだ、後遺症にさいなまれている、といった戦争経験はありません。よく言われるように、「焼け跡闇市派」は、修羅場をくぐり抜けるたくましさ、度胸を備えていて、国家の再建に粉骨砕身、自身の暮らしも顧みず走ってきました。そうした貢献の上に経済大国の果実がありました。さしもの繁栄にも影がさし、いわゆる閉塞感が社会を覆っています。敗戦を乗り越え経済的成長にエネルギーを傾けた前世代と同じことを戦無派に期待できるのか、と危ぶむ声があります。

  戦争の歴史は途絶え、どこかの時期に戦争は”時効”を迎えていたのでしょうか。イラクの戦いは突如開戦に至ったのではなく、必然の流れの中にあったはずです。パレスチナ問題があり、9.11米同時多発テロがありアフガンの戦争がありました。米軍の強大な軍事力をもってしても簡単に治安を回復できない理由がひそんでいるのです。ロンドンの同時テロもそうです。中国の台頭を警戒する声の中で、富の争奪という経済戦争が喧伝されます。これも、多かれ少なかれ歴史の必然です。そして、その必然の中に身を置くのは、世代を問わず等しく全国民です。隣人にサマーワ派遣の自衛隊員関係者がいるかも知れません。地下鉄網は東京中に張り巡らされています。バスが地方都市で標的になる可能性がないと言い切れるでしょうか。

  日本人の理念、倫理は、世代間で継承されてきました。好む好まざるにかかわらず、戦争の歴史を経て形成されてきたのです。時間が循環するとされる(戦後)60年をどのように受け止めるか、それはむしろ戦無派にこそ求められる作業のような気がします。その時期に、日本の新しいありようを提起する「構造改革」なるものを標榜(ひょうぼう)する総理大臣が、一種の国民投票で審判を仰ごうというのです。戦後還暦解散を、乱暴な表現をすれば”戦場未体験ゾーン”から考え、行動の視点をさぐってみたらどうかと思うのです。 

(鮟鱇)




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