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2005年「Webコラム一灯」

 コイズミが来た 戦無派の物思い(2)

2005/08/12

  小泉純一郎氏が自民総裁選で地滑り的勝利をおさめたのは、4年以上も前のことです。政界の一匹狼が、政権をとると宣言した時、直ちに本気にした人は少なかったと思います。あれよあれよという間でした。大派閥の候補らを蹴散らして宰相の座を射止めたのです。しかも、さしたる支持勢力もなく孤立して行き詰まり、すぐに放り出すに決まっている、という観測を覆して長期政権を継続中です。

  当時のシーンが浮かんできます。日本記者クラブでの総裁選候補者討論を傍聴していました。書類を入れたらしい袋を携えた小泉氏が登場したのは、他の候補者が待機してからだいぶ経っていました。遅れて入場した彼は、元総理も含む先着の候補にわびることもしません。小柄、痩身ながら堂々たる押し出しです。討論の中で、例の袋をぽんと叩き、(行革の)政策はすべてここに詰まっている、あとは実行するだけだ、と言いました。まさに”絵”になっていました。政治家にとって、外見やスタイルがいかに大事かを見せつけられたようでした。

  3カ月後、真夏の参院選遊説で静岡市の繁華街に来ました。街宣車の上でワイシャツをめくりあげて例の絶叫を披露します。広場を埋め尽くした聴衆が、携帯電話のカメラを頭上に掲げます。当時はやっていたシシローとかいうキャラクターグッズを手にした女子高生が「純ちゃーん、こっち向いて」と歓呼します。女性週刊誌に頻繁に登場したり、写真集を出版したり、と雑誌メディアを巧みに利用する初めての権力者だと驚異の視線を向けられました。そこから、政治をおもしろくしたという評価が出ます。なにせ、国会中継が視聴率を稼ぐ人気番組になったほどでした。テレビ型政治の面目躍如です。

  日本がおかしい、こんなはずじゃない、という思いがあふれていました。経済は不調、政治は漂流、治安は悪化。世界に冠たる”奇跡の成長国家”は、自信を喪失していました。強いリーダーシップが切望されていたのに、政府与党は、密室の調整に明け暮れている状況です。閉塞感が充満し、不満は発火点に近づきます。そこに「われらがコイズミ」が、まるでクライマックスを待っていたかのように登場したのです。

  巨大な抵抗勢力に立ち向かうドンキ・ホーテを自ら演出しているようでした。痛快なのです。自民党をぶっ壊すという言説は、逆説的ではあるけれど必要な手続きにみえました。新しい政界のヒーローになったのでした。人格、識見とともに、政治を演出する技量が権力者に求められる時代の幕開けでした。「小泉劇場」の観客は喝采をおくります。有権者と政治の間の距離が縮まったことは間違いありません。同時に、肝心な何かが少しも見えない、具体化しない、という違和感をぬぐえません。

  今、クール・ビズです。毎日頭を悩ます中高年の向きも多いでしょう。背広にネクタイが良かったなんて声も耳にします。それはそうです。銀髪、痩身、エネルギッシュなだれかは、カジュアル・ルックがやたら似合います。それにひきかえ、悪役に仕立てられた抵抗勢力の面々、首が短く腹が突き出たりして、いかにもぶざまなのです。60年間しゃにむに働いての暖衣飽食。ぜいたくを尽くした挙句のこの省エネルック、もしかしたら深い陰謀の所産なのでは、とつい疑うのです。

(鮟鱇)




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