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2005年「Webコラム一灯」

 戦争の時効 戦無派の物思い(4)

2005/08/15

  先日、静岡市で開かれた”核兵器廃絶を願う絵画と写真展”を鑑賞しました。会場にはガラスケースが1つ置かれていました。中に、赤茶に錆びた銃剣と弾丸3個が陳列してあります。1969年、硫黄島の山中で見つかったものだと説明文にありました。終戦から四半世紀を経て発見され、さらに36年。歴史を語る遺物です。

 

  硫黄島は太平洋戦争の激戦地で、日米両国の2万8000人以上が命を落としました。戦後60年を機に、「戦没者の碑」が改修されたといいます。これに合わせて政府主催の戦没者追悼式に現職首相として初めて小泉総理が出席しました。その際の報道では、日本政府はこれまでに8500柱の遺骨を収集しましたが、なお多くが現地に眠ります。遺族、関係者にとって、戦争は終わっていません。

 

  60年前広島に原爆が投下されたその日の朝刊、外信欄にあった小さな記事に目をひかれました。「中国広東省に元日本兵の情報 香港紙が報道」と見出しにあります。記事によると、男性は記憶を失っており、日本人だとする明確な証拠は不明といいます。軍で調理を担当し、終戦時に病気を患っていたため現地に1人残されたらしい-としています。

 

  フィリピンのミンダナオ島に旧日本兵、との情報に一時は国中が生存を確信したばかりでした。こちらは結局、あやふやなうわさや情報に振り回されたことが判明しました。期待が大きかった分、関係者の落胆、失望のほどは容易に想像がつきます。戦争の残像は、何十年経っても人々を苦しめるのです。

 

  散歩の途次、携帯ラジオでインタビューを聞いていました。原爆小頭症の家族史をまとめた女優の斉藤とも子さんでした。舞台で被爆女性を演じたのをきっかけに、母親の胎内で被爆した原爆小頭症の患者や家族を訪ね歩き、修士論文にまとめ大学院を修了したのだそうです。

 

  被爆者のさりげない言葉に、「ごく普通の市民の頭上に原爆が落ちた」事実を思い知らされ衝撃を受けた、と静岡新聞掲載のインタビュー記事で語っています。大検に合格し3浪の末大学入学、38歳になっていました。そして情熱を傾ける研究テーマに出会ったのです。ラジオから流れる声は、心を打たれたという患者と家族の暮らし、たくましい生き方を気負いなく紹介します。

 

  戦無派の彼女は語り続けることでしょう。出会った人々の崇高な姿を伝えなくてはならない、との思いは電波からも十分察することができました。戦争は、軍人や政治家が始め、その災厄は市井の人々に及びます。悲しみ、苦しみに、では終わりはあるのでしょうか。からだと意識に、深く刻み込まれて消えることのない戦火の残虐さに、時効は訪れるでしょうか。否という答えを、若い世代が引き継ぐことはできます。

(鮟鱇)




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