∋ ”王国”として全国に知られるサッカー静岡の真夏の楽しみといえば、SBS杯国際ユースサッカーです。その開幕戦を見てきました。頻繁な給水が必要な酷暑の中での、まさに白熱の好勝負でした。U-18日本代表対U-18セネガル代表は、終了間際のコーナーキックからの決勝点で、日本が2-1で勝利をもぎ取りました。
∋ 陽気なセネガルの民族楽器の鳴り物がにぎやかなスタンドで、後ろの席の子どもたちの”解説”を聞きながらの観戦です。少年団などでプレーしているのか、実に広い知識を持っているのに舌を巻きました。登場する選手の名前はもちろんすらすら出てきます。フォーメーション、細かい戦術にもそれぞれの意見を持っているようです。この日は、Jリーグ1部で多くの最年少記録を塗り替えてきた天才少年森本貴幸選手も活躍したとあって、盛り上がりはひときわでした。
∋ 若い選手のけれんのないプレーは格好の刺激剤です。前日の夜、2006年ドイツワールドカップの予選で、日本代表は唯一黒星を喫していた宿敵イランを破りました。1年半にわたる長い戦いを首位で終え、3大会連続の出場に花を添えました。スコアは2-1でしたが、内容としては快勝だったと思います。かねて指摘されてきた決定力不足を克服したのです。積極的なプレーが目立ちました。得点を決めた大黒選手に象徴されるように、ゴールへのあくなき執念がむき出しになっていました。
∋ 試合に臨む選手の談話に、リスクを冒してでも点を取りにゆく、というのがありました。ああ、これだったのだと思い当たりました。直前の東アジア選手権です。ジーコ監督は、何試合目だったか、先発メンバーを総入れ替えするという荒療治をしました。ほとんど固定した構成をいじらない、というのがジーコ流でしたが、アテネ五輪組の若い選手を中心に構成したのです。起用にこたえて、彼らはアグレッシブ(果敢)な動きを随所に展開しました。
∋ それまでの代表メンバーが”地位”に安住していたことはもちろんないでしょうが、大事な局面で点を取れないチームは、予選を通じて苦戦の連続でした。球を操る格闘技なのに、野性味という点で物足りなさがありました。しつこさ、泥臭さといってもいいかも知れません。業を煮やしたのか、ジーコ監督は1世代若い選手たちを試したのです。代表内部の競争意識を刺激したのは間違いありません。
∋ SBS杯でのU-18の試合で何より感服したのは、スピード、テクニックもそうですが、当たりの激しさでした。体力には定評あるセネガルチームをしのいでいました。底上げという観点でいえば、この世代の選手たちからレベルアップしているのでしょう。気迫で出場機会を奪い取る競争の風土が育っているということです。
∋ 同僚が過去の大会のダイジェストを一覧にまとめて本サイトで公開しています。あらためて驚きました。後に日本代表となる選手のほとんどが大会を経験しています。登竜門として知られる通りです。ゴンこと中山雅史、キング・カズの三浦知良、長谷川健太、武田修宏、名波宏、川口能活、小野伸二ら静岡県内の高校のOB、中田英寿、宮本恒靖、大久保嘉人ら、きら星のごとくです。これだけの顔ぶれですから、切磋琢磨も容易に想像できます。
∋ 世代交代というのは、どの分野でも難しいことだと思います。過去の実績がすぐれていればいるほど、代える必要はないのでは、という議論が出てきます。長期にわたる戦力、競争力維持を目指すのに、逆に低下を招くこともあります。力を保持し、さらに強化するためには、傑出したメンバーが求められますが、傑出を保証するのはやはり”全体”のレベルです。それなくして世代交代はあり得ないはずです。地域主義を掲げるJリーグの発足以来、サッカー界ではこの難事業が進んでいると感じます。長期的な視点と地道な
育成策が実ってきているのでしょう。
∋ この節ですから、どうしても政界に思いがゆきます。1人だけ威勢いいのがいて、あとは「その他大勢」に甘んじている。これでは世代交代は望むべくもありません。全体の競争力が向上することもまたあり得ないでしょう。
(鮟鱇)