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2005年「Webコラム一灯」

 カトリーナの魔手

2005/09/03

  超大型ハリケーン「カトリーナ」が米国南部に与えた災厄に息をのみます。スマトラ沖地震の津波被害では、日ごとに万の単位で死者数が増大してゆきました。観光客らが撮影したビデオ映像は、災害の”その時”を生々しくとらえた稀なケースでした。茶色の水の壁が押し寄せる光景は、甚大な被害を何より雄弁に物語っていました。今回、ハリケーンがもたらした水害のすさまじさは、大津波に匹敵するものでした。都市は水没し、死体が浮遊しているのです。

 

  米国は言うまでもなく世界に君臨する超大国です。豊かな富を享受する消費大国であり、防災でも先進国で、カリフォルニア地震の先例と教訓の研究に、静岡県からも調査団がしばしば訪れています。”災害強国”というのはしかし、幻想でした。社会のひずみの反映か、貧困層に殊に深刻な被害が集中しています。強盗略奪などの無法行為が悲嘆の街に横行し、復興を妨げる様子が放映されました。切なくなります。一方で全米からの支援活動も本格化しており、救われます。

 

  ハリケーン接近に伴い繰り返し警戒の呼びかけが行われ、地域によっては避難命令も出されました。それでも逃げる手立てがない。住民とともに家が丸ごとのみ込まれた例は、枚挙にいとまがありません。電気が止まった、飲料水がない、食料が底をついた、医薬品が届かない…。泥水とともに感染症が懸念されます。先進国をもいとも簡単にのみ込む、自然の脅威です。

 

  米南部の惨状が明らかになった1日、日本では総合防災訓練が展開されていました。静岡新聞の同日付夕刊では、東海地震の予知と発生を想定した訓練の記事写真と、ハリケーン惨事の大見出しが同居していました。危機意識を喚起させずにはおきません。今年は新しい試みとして、多会場分散型の訓練となりました。ラジオ防災スペシャルの番組を聴取しながら、主会場焼津市の数カ所を回りました。”大部隊”集結の迫力ある訓練風景とはもちろんゆきませんが、実際に発災すれば人々の暮らしは恐らくこうなるだろう、という局面を十分理解できます。日常性が垣間見えるということは、訓練の浸透の証でもありましょう。遠からず出るはずの成果、課題といった検証に注目しています。

 

  幼いころ、沼津市で体験した狩野川台風が“災害の記憶”の根っこにあります。床上まで浸水した自宅から、ボートで避難しました。言い知れぬ不安がありました。水の引いた家には、泥土が残り、消毒のにおいが鼻をつきます。いまだに「台風」という言葉には身構えます。8月末、11号が伊豆をかすめた日には、誇張でなく時に建物が揺れるほどの強風でした。幸い、県内では最近、大きな台風被害は少ないのですが、だからといって「災害に強い街」が実現したとも思えません。台風不感症は根拠がありません。遠い出来事ではなく、カトリーナの魔手が残した教えに学ぶべきです。それほどに容赦のない災厄でした。

(鮟鱇)




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