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2005年「Webコラム一灯」

 シネマ&テアトル

2005/09/08

  幼いころの劇場の空気が脳裏にこびりついています。封切り作品を見ようとする人たちで、映画館入り口から数百㍍もの行列ができた時代がありました。正月といえば、誇張でなく館内は都会のラッシュ時の電車並みの込み具合になったものです。

 

  周囲から漂う煎餅(せんべい)のにおいを気にもせず、こちらもラムネなど買い求めて映像の世界に浸っていると、突然フィルムが切れてスクリーンに数字が走り、暗くなります。すぐに復旧しない場合は、映画館の発行する半券のような紙切れを証拠にいったん帰宅し、時間を見計らって出直すことも本当にありました。

 

  ゲームや遊戯施設が充実しているわけではない、ビデオやDVDなどもちろん夢のまた夢。そんな時代の娯楽の王者は映画であり劇場での鑑賞でした。今も続いているのでしょうか、つい半世紀前には「文部省推薦」と銘打った作品が多数製作され、学校こぞって営業時間前の劇場を”借り切って”鑑賞し、その感想文を提出したりしたものです。

 

 ∋ 街の文化を支えるのが映画館で、繁華街にはデパートと並んで必須の施設でした。JR駅周辺だけでなく、いわゆる場末にも小規模な館があり、幾分低料金で鑑賞できました。郊外に大型店が進出し、中心街が空洞化してシャッター通りなどといわれてさびれてゆくころには、映画館からも客足が遠のいていったのです。テレビの隆盛、ビデオレンタル店の進出と、映画にとってさらに厳しい環境が続きました。県内でも映画館が1軒もない市が珍しくなくなりました。映画とともに育った世代としては、劇場の灯が消えるのは、実に寂しいことです。

 

 ∋ 政令市を目指し”大合併”が成った浜松市でも、長年市民に親しまれてきた映画館ビルが、先月末の株主総会で閉館を決めました。5年前、市中心部にシネマコンプレックス(シネコン)が登場するまでは市内最大の映画館だったそうです。全国的にも、シネコンが上映設備の充実や若者のライフスタイルに適合して好調なのに対し、もともと地方で出発した館は押され気味です。

 

  市民による上映活動、貴重な記録映画や古典などフィルムの保存の機運が高まっています。1世紀の歴史を経て、映画は実写、アニメともに芸術、芸能、文化のジャンルとしての地位を確立しています。ナルセ、オズ、クロサワら、世界的にも評価の高い監督が今日の日本人監督の活躍の道を開いてきました。海外の映画賞での活躍もしばしば伝えられます。脈々と続く文化を朽ちさせるわけにはゆきません。時代に則した保護・保存の方法を生み出し、資金を投入すべきです。きたる世紀に悔いを残さないためには、「今の行動」が必要です。映画館をノスタルジーだけの場にするわけにはゆきません。

(鮟鱇)




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