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2005年「Webコラム一灯」

 阿波の傑物

2005/09/22

  徳島といえば、思い浮かべるのは故三木武夫元首相と後藤田正晴元副総理という、自民党の2巨頭です。かつて「三角代理戦争」「阿波戦争」という言葉がありました。三木氏と田中角栄元首相の中央政界での角逐が徳島に持ち込まれていました。後藤田氏は参院選初出馬で苦杯をなめています。政敵ともみなされる三木、後藤田の両氏ですが、実は重なるイメージがあります。

 

  以前、後藤田氏の講演を聞いたことがあります。話の中身は記憶しませんが、時々の政権の要石(かなめいし)となった政治家は、意外なほど小柄で、歩く姿は華奢にさえ見えました。例の「かみそり」の異名が刷り込まれていたせいか、人を寄せ付けない厳しさを想像していましたが、これも話しっぷりは好々爺よろしく穏やかでした。

 

  自ら”議会の子”と称し、国会を「コックワイ」と独特に発音していた三木元首相も小柄痩躯の人でしたが、愚直に信念を通す政治家だったと思います。例えば孤軍奮闘、挙党協と対峙し政権を守ろうとした政争での印象は強烈でした。ただ、ふと見せる笑顔、度の強そうな眼鏡の奥の目が涼しげでした。

 

  小泉チルドレン(子どもたち)と呼ばれる新人議員の初登院となった特別国会召集日に後藤田氏91歳の死去が報じられました。政界も世代交代の季節なのか、若々しい顔が目立ち、女性議員にカメラの放列です。華やかな雰囲気でしたが、少なくとも胸に残る言葉を発する”選良”はいませんでした。ワイドショーの狂騒がそのまま持ち込まれたような言論の府に、何かが欠落している気がします。

 

  端的に言えば、「風格」です。政治家らしさ、と言ってもいいかも知れません。郵政民営化に反旗を翻して解散・総選挙の引き金を引いた面々がそろって頭(こうべ)を垂れ、恭順の意を表し、”屈服”の言い訳のごとくに「世論に従う」と言うのです。そんな時だけ都合よく持ち出される世論。では、世論が誤っていたらどうするのでしょうか。 

 

 ∋ 風になびくがごとくの議員諸侯が考えるのは、恐らく「国の姿」などではなく、自らの明日、身分、選挙でしょう。大局をみて、将来を憂える志、知性とは縁遠いと思います。卑屈で、だから迫力にも乏しい。4年余以前、小泉氏はドン・キホーテ然と総裁選に出馬し、磐石とみえた既成勢力・自民党をぶっ壊すと絶叫したのでした。単騎打って出て、手法を取り沙汰されることはあっても迫力だけは確かでした。そして今、”親衛隊”を誕生させ、新しい多数派を形成したのです。

 

  戦争経験者の後藤田氏は、危機管理の判断と対処能力に特にすぐれていました。その背景には、並外れた情報収集力があったというのが定説です。当落かかわりなく今回の選挙で臍(ほぞ)をかんだ面々は、この点でもお粗末でした。”敵方”の意図を読み誤り、思わぬ不利に、「こんなはずでは」と慌てふためいているのです。敗北を喫すれば、有権者をダシにする。節操も何もあったものではない。

 

  若さの対極にある指導者たちの思想の根幹には、信念の揺るぎなさと自負があります。国を思う、そのために何をなすべきか-。判断の尺度をその一点に置く。そこに大局観が生まれます。いわゆる中二階組やそれ以後の世代に、政治をやることの覚悟のほどをみせて欲しいと思います。徳島県の地元紙のサイトをのぞいたら、知事が後藤田氏の県民葬を催す意向だと伝えていました。実現すると、三木氏死去以来、17年ぶりだといいます。

            
(鮟鱇)




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