∋ 戦後日本が先進国家に飛躍してゆくのを支えたのが、モノづくりの技術です。その黎明期、浜松市を中心とする県西部は、よく言われる「やらまいか」の開拓者魂がほとばしる地域でした。繊維、楽器、オートバイの3大産業はもちろん、関連業界が広い裾野を形成していました。
∋ 浜松発の技術で世界ブランドを獲得したものは数知れません。米の人気シリーズ映画「スター・ウォーズ」の『エピソードⅢ シスの復習』に登場するダース・ベイダーのマスクの試作に、ローランド・ディージーの切削マシーンが使われたという先ごろの報道は痛快でした。
∋ 政府は、日本の産業・文化を支える技術を継承発展させるため、革新的な技術、伝統技能の熟練者などを対象に「ものづくり日本大賞」を制定しました。よい試みだと思います。栄えある第1回、経済産業大臣賞を受賞したのが、ヤマハ発動機グループのアイパルス社の生産グループ社員でした。65歳のベテランは、40年以上にわたって工作機械の製作などに携わり2000年設立の同社に他のメーカーから移り、後輩や協力会社の技術者を指導してきたそうです。
∋ 自動化、省力化は時代の要請ですが、技術の現場では実は、「人から人へ」次世代に伝承することが大きな課題になっていると聞きます。自動化はいわば、完成した領域の仕事を繰り返し連続するシステムでしょうが、その構築に至る経緯には、職人的といってもいい知識と経験の蓄積があります。
∋ 日本能率協会がつい最近発表した「当面する企業経営課題に関する調査結果」によると、話題の2007年問題つまり団塊の世代の大量退職が始まる時、技術や技能の継承が心配だという回答が、製造業の51%にも上りました。ITの世とはいえ、技術を生み出し適用の判断をするのは結局、人間です。そして日本得意の技術分野の蓄積が、団塊組あたりまでで途絶する恐れがあるというのです。
∋ 団塊もしくはそれに近い世代の退場を前提に議論が展開されていますが、超高齢社会の現実が迫っているのです。社会の活力を維持するためにも、彼らを生かさない手はありません。技術の匠を輩出してきた”人口のこぶ”を、それこそ巧みに取り込む国家的な方策が必要でしょう。その猶予は長くないのです。
(鮟鱇)