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2005年「Webコラム一灯」

 がれきが語るもの

2005/10/12

  時間とともに伝えられる犠牲者の数が飛躍的に膨らんでいく。日本時間の8日昼、パキスタン北東部で発生したマグニチュード7.7の地震は、過去の大規模な震災でも幾度となく繰り返された経過をたどっています。当日のテレビでは「パキスタン、インド両国で2千人を超える」と報じられた死者の数ですが、わずか数日のうちに「4万人に達する」可能性が指摘されるようになりました。

 

  首都イスラマバードの高層アパートでは、国際協力機構(JICA)派遣の邦人専門家が、幼子とともに犠牲になりました。彼が国際協力事業に身を投じるようになった転機は、神戸市の民間会社勤務当時に遭遇した阪神・淡路大震災だったといいます。震災を機に「人生観が変わった」という人物が、異国の地で再び震災に遭い、命を落とした運命の皮肉。間もなく任期を終え、帰国直前だったという事実とも相まって、涙を誘います。

 

  それにしても、です。テレビに映る被災建物はまるで爆撃を受けたかのようです。邦人親子が命を落とした高層アパートも例外ではありません。いくら阪神・淡路大震災の約10倍のエネルギーが襲ったとはいえ、地震による破壊とは思えない惨状です。地震の揺れが、たまたま高層アパートに選択的に、致命的な被害をもたらす振動だった可能性がある、との研究者の指摘もあります。しかし、あそこまで壊滅的に破壊されていると、素人の目には建物の耐震性の不備を疑わずにいられません。実際、12日になって、同国の警察当局が違法増築の疑いで捜査を開始し、アパート所有者ら関係者の逮捕状を請求する方針を固めた、と報道されました。

 

  10日付静岡新聞朝刊の「週刊地震新聞」には、やはり建物ががれきの塊と化したパキスタン北部の町の航空写真も掲載されていました。田園風景を縦断するがれきの帯。多くの人がその下で貴い命を落としたり、生き埋めとなったであろうことが一目瞭然の、恐ろしい光景でした。

 

 ∋ 同じ紙面に、国連地域開発センター研究員などを歴任し、アジア各国の事情に詳しいラジブ・ショウ京都大学助教授(国際環境防災マネジメント)の話が載っています。パキスタン北部の伝統的な建築工法は本来は一定の耐震性を備えているが、最近は「石材と職人の減少」で耐震強度が弱い家が増えた。「これが被害拡大の一因になった」というのが助教授の分析です。

 

  「家屋に耐震策を施さないのは貧困が原因ではない。建築費の7-10%のコストで『壊れても人は死なない』家は実現できる」。ラジブ・ショウ助教授の警告は決して、彼の国だけに向けられたものではありません。“防災先進県”の私たちの足元でも、建築費に比べればわずかな経費で済むはずの家屋の耐震化は遅々として進んでいません。「TOUKAI(東海・倒壊)―ゼロ」の掛け声とともに、行政が補助金まで出しているのにもかかわらずです。

 

  日本を含む各国の救援部隊も到着し、被災地では懸命の救助活動が続いています。間もなく冬を迎える現地では、被災者の避難生活、感染症まん延の恐れが新たな課題に上り始めています。家を失った被災者を襲う悲劇は、まだまだ続きます。その数は「250万人」に上るともいわれています。

(鯔)




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