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2005年「Webコラム一灯」

 4000年の歴史

2005/10/14

  以前から思っていたことに「蕎麦(そば)屋」の不思議があります。静岡県はソバの産地ではないにもかかわらず、「通」をうならせるようなうまい蕎麦屋がたくさんあります。新蕎麦の季節ともなると各店が競って「新蕎麦打ち始めました」の張り紙を掲げ、「麺食い」の食欲をそそります。店自慢のだしを利かせたつゆに、すりおろした地場のワサビを加え、香り豊かな手打ちの新蕎麦をたぐる。締めにはやはり香り高い蕎麦湯を味わう。「食欲の秋」を満喫するひとこまです。

 

 ∋ 蕎麦に限らず、日本人の麺類好きは多くの人が認めるところではないでしょうか。関西や四国なら蕎麦よりも「うどん」。ラーメンは「国民食」と言ってもよく、地域によってだしや麺が異なることから、最近ではお国柄を売り物にした店が軒を連ねる「ラーメン通り」「ラーメン横丁」が、各地の百貨店や駅ビルの目玉テナントになっています。富士宮のまちおこしの主役となった焼きそばも、子どもにも、大人にも愛されているポピュラーな食材です。焼きうどん、そうめん、きしめん、冷麦、冷麺…と、挙げればきりがありません。

 

  若い女性により高い支持を得ている麺類といえば、イタリア料理のパスタかもしれません。代表的なスパゲッティー、マカロニをはじめとして、麺の種類は数百種類にも上るといわれるほどに多種多様。ソースもバラエティーに富み、肉、野菜、魚介類などと具のバリエーションも豊富なことが、日本人にも幅広く受け入れられている理由でしょう。同じ麺類といっても、蕎麦、うどん、ラーメンなどとは食し方がまったく異なりますが、麺の茹で加減がうまさの決め手となる点は共通しています。

 

  13日の静岡新聞朝刊に「中国西部の遺跡から約4000年前のものとみられる麺が発掘された」との記事が写真付きで掲載されていました。碗(わん)とみられる陶器の底に付着していたという麺は、長さ50センチ、直径0・3センチ。写真は、まるで丼の底に残ったラーメンの食べかすのようにも見えましたが、原料は小麦ではなくアワとキビだといいます。

 

  約2000年前には世界各地で食されていたといわれる麺の発祥地をめぐっては、「中国、イタリア、アラビア説で論争がある」のをこの記事で初めて知りました。今回の発掘は発祥地論争にも影響を与えそうですが、中国の文献に初めて麺が登場するのは約1900年前。そこから一気に、さらに2000年も遡ることには、「にわかには信じがたい」との声が研究者の間からも上がっているそうです。

 

  発祥の地はどこにせよ、現代に生きるわれわれが多様な麺の食文化を享受できるのは、アラブで始まったとされる小麦栽培と、中国、イタリアで発展し、伝承されてきた調理技法の恩恵に浴しているからに変わりありません。東西文化の伝播路として、シルクロードが「麺類の歴史」の上でも大きな役割を果たしてきたことでしょう。中国から日本へと伝わる際には朝鮮半島の食文化の影響も受けたでしょうし、国内でも地域間の交流の歴史を重ねてきたはずです。交流が多様性をもたらし、洗練、成熟を促す。産地でなくても極上の蕎麦を味わえるのは、まさに食が「交流の文化」だからです。

 

  発掘報道に接しても発祥地論争の決着には関心が向かず、「交流の歴史こそが大切」との思いを新たにしました。これも、秋といえば「食欲の…」しか思い浮かばない、食いしん坊のさがでしょうか。

(鯔)




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