∋ 晩秋の夏日が話題になるなど、異常気象の年もさすがに木枯らし1号が間近に予想される時期です。周囲の森は、濃い緑で沼を守ろうとするかのように静寂の空間を形成していますが、湿原の風景は、枯れた黄色に染められました。わずかの時間をみつけて、磐田市の桶ケ谷沼を訪れました。
∋ ひと雨来そうな曇天の午後、人影はなく、葦や背丈の高いススキが生い茂り、平場からは沼の姿をつかむことは全くできません。群舞とはゆきませんが、時折りアカトンボが目に入ります。こんもりした樹林の根元を縫って散策路が続きます。周囲1.7㌔、面積7.43㌶のさして広くない湿原に67種類のとんぼが確認されているそうです。まさに宝庫です。特に、ベッコウトンボが知られます。
∋ 高速道路から国道のバイパスを乗り継いで、聞いてきたインターチェンジの降り口を行き過ぎてしまいました。自然の宝庫に近接して、喧騒の道路が走っています。磐田原台地の東端、静岡県の自然環境保全地域に指定されています。市の公式サイトによると、平地性淡水池沼というようです。がっちりした木組みの観察小屋に入ります。素通しの”窓”から前方を望みます。沼の全容が、眼前に広がると、感動をおぼえます。鴨でしょうか、遠くに羽を休めています。
∋ 幼いころ、夏の遊びの光景の中には、必ず昆虫、特にとんぼがいました。シオカラトンボ、オニヤンマ、イトトンボなどが興味の的でした。湿原入り口に建てられたビジターセンターで、とんぼ標本を見ます。シオカラ、オニヤンマも展示されており、懐かしさがこみ上げてきました。ヤゴの愛嬌ある姿も思い出しました。ベッコウトンボは、環境省公表のレッドリストで絶滅危惧1類とされているようです。標本で、その小ささを知りました。いかにもはかなげです。
∋ 桶ケ谷沼では、ザリガニやアカミミガメなど外来種捕獲作業によって、在来種の保護、生態系の保全に努めているとサイトに紹介されています。地元自治会、自然保護団体や高校生が献身的に尽くしているといいます。心強い限りです。観察路の脇には、「STOP外来種」の看板が立てられています。痛切な訴えです。
(鮟鱇)
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