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2005年「Webコラム一灯」

 偽造の重罪

2005/11/24

 ∋ どこでどう調べるのか、自宅へのダイレクトメールや電話で、マイホームの改築や建て替えの誘いが頻繁です。一庶民として、景気の回復を実感する時です。ベタ基礎だ、免震だといった用語に注意が向きます。古い木造住宅、それも継ぎはぎだらけとあって、「耐震性」の口上には弱いのです。

 

  静岡県庁西館の免震化工事がこの夏、話題になりました。新築ではない現存建築物を免震構造化する工法で、1階部分の20本の柱を切断して建物を持ち上げ、間に積層ゴムアイソレーターや鋼製U型ダンパーなどの免震装置を設置するというものです。

 

 ∋ 一時移転などの必要がない「居ながら工事」が可能といいます。そんなすさまじいことが、と驚きますが、「必要は発明の母」、地震に耐える技術はめざましい進歩を遂げているのです。西館は過去の耐震診断で唯一、防災拠点となる県庁の耐震評価で県が求めるレベルに達していなかったそうです。東海地震の切迫つまり「いつ起きても不思議でない」状況が伝えられる中で、防災の頭脳となる官はもちろん、住居を求める市民も、東海地震が頭から離れることはないのです。

 

  千葉県の建築設計事務所による耐震強度偽造問題も、決して対岸の火事ではないと注目していたら、祝日に衝撃的なニュースが伝わってきました。昨年夏開業したばかりの静岡市内のビジネスホテルの構造設計にくだんの事務所の関与が判明したため、安全が確認されるまで営業休止に踏み切ったというのです。県庁はじめ官公庁が多く、大手企業の支社や支店も集中する静岡市は、”支店経済の町”ともいわれ、政令指定都市移行に伴い宿泊客の増大、殊にビジネス需要が注目されていました。しかも有数の規模のビジネスホテル進出とあって、見学に行ったものでした。

 

  虎の子の財産をはたき、さらに大型のローンを組んでやっと手に入れたマイホームのマンションが震度5レベルで倒壊の恐れがあり退去することになった若い共働き一家の苦悩をテレビ映像で見ました。当面の寝具などを運び戻して夜間は、旧宅のマンションに移るのです。泣くに泣けない、どうしてくれる、という心境は痛いほど分かります。同情にたえませんでした。

 

  静岡新聞記事は、都内の一級建築士の「今さら無理な設計が問題視されることに驚いている」との趣旨の談話を紹介していました。露見したのは氷山の一角に過ぎないというのです。国指定の検査機関の立ち入り検査が行われる事態になっていますが、責任の押し付け合いにもみえるやりとりがニュースに流れます。最終的に被害をこうむる人々をどのように救済するというのでしょう。

 

  「疑心暗鬼」という言葉があります。疑う心が強くなると、何でもないことが恐ろしく疑わしく思えるのですが、この恐怖の連鎖も心配です。”日本の仕事”はこれまで緻密、正確、堅実、つまり高品質で世界に地歩を築いてきました。盤石の基礎の上に立つ、信頼性という何ものにも代えがたい財産が損なわれてしまうのです。ごく少数の者の裏切り、背信だと片付けられません。影響の深刻さは計り知れないのです。

(鮟鱇)




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