ShizuokaOnline
オリジナルコンテンツ

ShizuokaOnlineのオリジナル企画。デジ記者が旬な話題を動画を交えてレポートします。
「大人」の読者にじっくり味わってもらいたいニュースが満載。「寄稿・わが至福の時」も好評です。
静岡県内の大学の話題は「キャンパス・ナビ」でチェック!
県内トップアスリートに迫る動画インタビューをお届けします。
子育て世代の情報・交流の広場です。※アンケート実施中!ご協力ください。
最新情報やニュースをケータイサイトでもチェックできます。お得なグルメ情報も掲載!
志らべのいっピン!

ポッドキャスティング

47News
家康囲碁道場
静岡ぐるめ探検隊
ShizuokaOnline(静岡新聞社・静岡放送オフィシャルサイト) > Webコラム一灯 > 2005年「Webコラム一灯」

2005年「Webコラム一灯」

 町から子どもが消える?

2005/12/04

  幼い女児ら家族とともに静岡市に赴任中で、この地での四季を体験している人が話していました。休日、公園に子どもを連れ出すと、チョウやトンボが舞う様子に歓声を上げた。そのことで自分も感動した。都会では、すっかり縁遠くなってしまった風景があると言うのです。子どもが戸外を楽しむ自然の恵みを認識できないことを恥じました。

 

 ∋ “昭和ブーム”だといいます。それも30年代と、時期が特定されているようです。そのころ幼児期を過ごした人々が半世紀前を回顧しているのでしょうか、周囲に影響を及ぼしているのでしょうか。それだけでは説明がつかないように思います。”レトロ”ということでいえば、明治にも大正にも関心が向いたもでのす。それが今、昭和なのはなぜか。

 

  記憶をたぐり寄せてみます。30年代に思い入れのあるらしい人の話を織り交ぜてみると、男児なら大概、がき大将を核に群れをなして行動していました。カン蹴り、ビー玉、メンコ…と、広場や小路で遊びを繰り広げていました。女児ならおはじき、縄跳びといったところでしょうか。友人同士、互いの狭い住居を訪れて、迷惑がられるのも構わず、遊び場代わりに“占拠”しました。

 

  子どもなりに対立や融和があり、交渉じみたことも行われました。喜びとともに挫折があり、悔しさも安堵も味わいます。おとな社会の縮図で、上下の従属や横のネットワークが形成されました。そこでしつけられ、社会のルールも自然に身についてゆきました。登下校の通学路はさながら子ども天国で、一種の聖域にもなっていました。

 

  その通学路が狙われています。わずか10日の間に、実に残虐な2件の事件が続きました。下校時に、小学1年、7歳の女児が殺害されたのです。学校と自宅の中途でこつ然と消え、ダンボール箱に、林道脇に、遺体が放置されていました。全く理不尽に生命を奪われる。亡くなった子どもの無念、親の気持ちを思うと、やり切れません。

 

  事件は、模倣犯を生むとはよく指摘されるところです。それにしても、いたいけな命を奪うこのような事件の続発は異常としか言いようがありません。幼児虐待など、不気味な精神風土をうかがわせる空気が充満しています。子どもを標的にして罪の意識の片鱗すらみせないおとなの犯罪者の供述が伝わってきます。彼らの言葉には、驚くほどの幼児性が漂います。年齢が、善悪の判断、倫理、常識の涵養につながっていない。残酷さだけは肥大して、市民社会の隙をうかがう狡猾さをもって、体力的に抵抗できない女児を狙っているのです。

 

 ∋ 人々が無策であったわけではありません。IT時代らしく防犯機器を携帯させたり、科学技術を取り入れた安全策を教育したりしています。学校周辺での声かけ、保護者やボランティアによる同行も行われています。決め手とされるのが、近隣社会の再構築です。“お隣さん”感覚で、互いを気遣うような関係の回復です。それが、簡単ではありません。

 

  閉塞感と表現される雰囲気が、社会に蔓延します。獲得目標や目的意識を持ちにくく、それゆえ達成感が乏しい。プライバシーの浸透により、不干渉が当たり前になりました。一方で、のぞかれない権利を踏みにじり、商品化するような輩が横行する。警戒が高じて、親近感が希薄になっています。住居にしてもそうです。密室性が高いことが要件になっています。いざこざやトラブルをも抱え込んで“互いの顔が見える距離”といったものが、測りにくくなっています。

 

  このような疎遠な社会では、関係を築くことが困難で、そのため他人に対する不寛容が生じかねません。犯罪者は程度の差こそあれ、“孤独”にうごめいています。人々が、互いの関係の中で自らを磨き、社会によりよく適合してゆく忍耐の作業ができない。それでなくとも少子化が進行しています。そして犯罪の増大。町から子どもの姿が消えるかも知れません。真剣に心配する時期にきています。昭和は、少なくとも善意の“よりどころの残る時代”だったとは言えるでしょう。

(鮟鱇)




メール メールで記事を紹介 印刷 印刷する



[特集]


ここから関連ニュース・バックナンバー

バックナンバー

遺跡の声を聞く 2005/12/29  
ジャック・アンダーソンの死 2005/12/22  
日本のフェイルセーフ 2005/12/19  
桜吹雪は拝めたか 2005/12/15  
カナリアを追う 2005/12/12  
砂上の楼閣 2005/12/08  
国技の無国籍化 2005/11/30  
偽造の重罪 2005/11/24  
古書に浸る 2005/11/23  
書" 道" 2005/11/19  
とんぼの里 2005/11/12  
ハママツは世界ブランド 2005/11/08  
オリオンズよ 2005/11/03  
「簡潔明瞭」の陥穽 2005/10/28  
国をつくるということ 2005/10/21  
26番目の選手 2005/10/18  
4000年の歴史 2005/10/14  
がれきが語るもの 2005/10/12  
匠を見よ 2005/10/09  
”盟主”の責任 2005/10/06  
二足のわらじ 2005/10/02  
凛然たる女性たち 2005/09/29  
おだっくい超世代 2005/09/25  
阿波の傑物 2005/09/22  
読書民族の美学 2005/09/16  
「審判済んで夜が明けて」 2005/09/12  
シネマ&テアトル 2005/09/08  
「地気」と芸術 2005/09/04  
カトリーナの魔手 2005/09/03  
大学サバイバル 2005/08/29  
本のにおい 2005/08/25  
沈黙する知性 戦無派の物思い(7完) 2005/08/22  
言葉の漂流 戦無派の物思い(6) 2005/08/20  
「戦い取るもの」 2005/08/19  
痛みの先に 戦無派の物思い(5) 2005/08/16  
戦争の時効 戦無派の物思い(4) 2005/08/15  
単「純化」 戦無派の物思い(3) 2005/08/14  
コイズミが来た 戦無派の物思い(2) 2005/08/12  
戦後還暦解散 戦無派の物思い(1) 2005/08/11  
時代の気分は「情けない」 2005/08/07  
宇宙ラーメンを食べたい 2005/08/04  
都市難民 2005/07/31  
それでも天下りですか 2005/07/28  
野茂にノー・モアはない 不死鳥よ(下) 2005/07/26  
カズはピッチに 不死鳥よ(上) 2005/07/26  
ソフト・ターゲット 2005/07/22  
野球は文化か 2005/07/17  
ネポティズムという宿痾 2005/07/14  
情報源の秘匿 2005/07/12  
暴力の連鎖 2005/07/08  
オイルショック再び? 2005/07/06  
公団、天下り、談合 2005/07/02  
骨太と鉄面皮 2005/06/30  
”らしくない”人々 2005/06/25  
貪欲なるストライカー 2005/06/23  
「金時持ち」遥か 2005/06/19  
家族の絆 2005/06/16  
総中流の幻想 2005/06/12  
宮本という名作 ドイツ切符(下) 2005/06/10  
ジーコの意地 ドイツ切符(上) 2005/06/09  
”W杯”ゴール目前 2005/06/04  
綿々、技の伝承 2005/06/02  
蓮池薫さんのライフワーク 2005/05/29  
病診連携 2005/05/26  
破壊の行き着く先 2005/05/21  
戦争の下請け化 2005/05/19  
デビッド・リーンが描いたもの 2005/05/15  
情報過疎の戦場 2005/05/12  
徳富蘇峰と文学の森 2005/05/08  
力士・片山の夏 2005/05/05  
三島由紀夫の小遣い帳 2005/05/03  
田中一村 植物を描き尽くす 2005/05/01  
融和する美-花の不思議 2005/04/29  
男のスーツ 2005/04/27  
M&A劇場-額に汗する者は 2005/04/24  
M&A劇場-従業員さまいずこ 2005/04/22  
M&A劇場-団塊の観客たち 2005/04/20  
「舞姫をたどる」 2005/04/17  
異文化同化 2005/04/14  
“聖地” の憂鬱 2005/04/10  
フットボール 日独の紐帯 2005/04/07  
水の風景 2005/04/02  
内なる国際化 2005/03/31  
「方言万歳」 2005/03/26  
「万博 35年後」 2005/03/21  
「万博 35年前」 2005/03/20  
伝説の豪腕-持続する志 2005/03/17  
適材適所 2005/03/13  
球春来たる 2005/03/10  
スターの染み入る言葉 2005/03/06  
「父」の崩壊 2005/03/03  
大いなる二番手 2005/03/01  
黒はんぺん賛歌 2005/02/26  
「情」と「効率」 2005/02/23  
ベビー81 2005/02/19  
17歳の閉塞 2005/02/16  
信用無用 2005/02/12  
ヒーローは燃え尽きない 2005/02/10  
はとバスご一行様御成り 2005/02/06  
楽天的野球論 2005/02/02