ShizuokaOnline
オリジナルコンテンツ

ShizuokaOnlineのオリジナル企画。デジ記者が旬な話題を動画を交えてレポートします。
「大人」の読者にじっくり味わってもらいたいニュースが満載。「寄稿・わが至福の時」も好評です。
静岡県内の大学の話題は「キャンパス・ナビ」でチェック!
県内トップアスリートに迫る動画インタビューをお届けします。
子育て世代の情報・交流の広場です。※アンケート実施中!ご協力ください。
最新情報やニュースをケータイサイトでもチェックできます。お得なグルメ情報も掲載!
志らべのいっピン!

ポッドキャスティング

47News
家康囲碁道場
静岡ぐるめ探検隊
ShizuokaOnline(静岡新聞社・静岡放送オフィシャルサイト) > Webコラム一灯 > 2005年「Webコラム一灯」

2005年「Webコラム一灯」

 ジャック・アンダーソンの死

2005/12/22

  1993年制作の米映画『ペリカン文書』は、ベストセラー作家ジョン・グリシャムの原作で、骨太のストーリーが展開されるサスペンスです。細部の記憶のほどは定かではありませんが、最高裁判事殺害事件をめぐる仮説をまとめたことで陰謀に巻き込まれたジュリア・ロバーツ演じるヒロインが、デンゼル・ワシントンの新聞記者に助けを求める場面だったと思います。「なぜ私に」と問う記者に、「(殺された恋人が)あなたの記事を信頼していた」とこたえます。

  最近は日本の新聞でも、署名記事が一般化してきましたが、米国のジャーナリズムでは、はるかに早く取り入れられていました。記者の名があることで、“顔のある記事”が、読者と紙面の距離を縮めてきたといわれます。署名記事が、権力の不正を監視し市民の声を代弁してスクープとなり、ジャーナリズム史を彩ってきたのです。

  19日付の静岡新聞朝刊社会面に、外国人物の死亡記事がありました。顔写真も付いていましたので、注目を要する訃報だと分かります。ジャック・アンダーソン氏でした。83歳、パーキンソン病の合併症での死です。地方紙記者から出発し、コラム「ワシントン・メリー・ゴーラウンド」に鋭い筆を振るい、72年にはピュリツァー賞を受賞しています。フリーランスとして、ジャック・アンダーソンの看板で書き続けた記者人生だったでしょう。

  以前から新聞編集の現場で、海外ジャーナリズムについて学ぶ機会を惜しまぬように仕込まれてきました。特約で入稿する、アンダーソン氏の記事を翻訳するのもその一環でした。乏しい英語力からすると、かなり難解な原文が多かったのですが、辞書と首っ引きで訳す過程で、記事の正確性とは何か、事実の重みとはどういうことか、おぼろげながら教えられたような気がします。

  翻訳したコラムが、小さな囲み記事となって紙面に掲載されるのはひそかな喜びでした。ジャック・アンダーソン発のスクープが米政界を揺るがしている、といった報道が後を追うように次々届くと、「ああ、あの記事にはこんな伏線があったのだ」、「彼は、こうした展開を読んでいたのだ」、「取材の意図はこれほど深いものだった」といった、著名なジャーナリストの“仕事の裏側”を想像するのです。

  調査報道という取材手法が成熟していない時代、捜査権は言うに及ばず、資金とてない記者が、政財界の暗部をえぐり社会の矛盾を摘出してゆく。そのためには、人脈の広がりと深さ、取材のテクニック、記事執筆のわざなどはもちろん欠かせません。勇気と持続力を含め、すぐれた報道の条件は数々あるでしょうが、何より書くことへの動機、書くことに込める志、スピリットがスクープを生むはずです。

  今年、米ジャーナリズムは、メディアそのものが素材になる大事件に揺れました。大統領を辞任に追い込んだ72年のウオーターゲート事件で「ディープスロート」と呼ばれた情報提供者の名前が、明らかになりました。本人の告白により、33年間封印されてきた秘密が表面化したのでした。イラク戦争をめぐり中央情報局(CIA)秘密工作員の実名がマスコミに漏洩した問題では、連邦大陪審での証言を拒否した記者が約3カ月収監される事態になりました。ニュースソース(情報源)の秘匿は、記者の基本的倫理です。匿名の情報源に対する読者の考えが大きく変容しているとされる中で、その倫理が風圧にさらされています。一方、メディア自身が自ら問い直さなければならないような不祥事もありました。泉下のアンダーソン氏は、この時代状況をどうみているか。コラムを期待したくなります。

(鮟鱇)




メール メールで記事を紹介 印刷 印刷する



[特集]


ここから関連ニュース・バックナンバー

バックナンバー

遺跡の声を聞く 2005/12/29  
日本のフェイルセーフ 2005/12/19  
桜吹雪は拝めたか 2005/12/15  
カナリアを追う 2005/12/12  
砂上の楼閣 2005/12/08  
町から子どもが消える? 2005/12/04  
国技の無国籍化 2005/11/30  
偽造の重罪 2005/11/24  
古書に浸る 2005/11/23  
書" 道" 2005/11/19  
とんぼの里 2005/11/12  
ハママツは世界ブランド 2005/11/08  
オリオンズよ 2005/11/03  
「簡潔明瞭」の陥穽 2005/10/28  
国をつくるということ 2005/10/21  
26番目の選手 2005/10/18  
4000年の歴史 2005/10/14  
がれきが語るもの 2005/10/12  
匠を見よ 2005/10/09  
”盟主”の責任 2005/10/06  
二足のわらじ 2005/10/02  
凛然たる女性たち 2005/09/29  
おだっくい超世代 2005/09/25  
阿波の傑物 2005/09/22  
読書民族の美学 2005/09/16  
「審判済んで夜が明けて」 2005/09/12  
シネマ&テアトル 2005/09/08  
「地気」と芸術 2005/09/04  
カトリーナの魔手 2005/09/03  
大学サバイバル 2005/08/29  
本のにおい 2005/08/25  
沈黙する知性 戦無派の物思い(7完) 2005/08/22  
言葉の漂流 戦無派の物思い(6) 2005/08/20  
「戦い取るもの」 2005/08/19  
痛みの先に 戦無派の物思い(5) 2005/08/16  
戦争の時効 戦無派の物思い(4) 2005/08/15  
単「純化」 戦無派の物思い(3) 2005/08/14  
コイズミが来た 戦無派の物思い(2) 2005/08/12  
戦後還暦解散 戦無派の物思い(1) 2005/08/11  
時代の気分は「情けない」 2005/08/07  
宇宙ラーメンを食べたい 2005/08/04  
都市難民 2005/07/31  
それでも天下りですか 2005/07/28  
野茂にノー・モアはない 不死鳥よ(下) 2005/07/26  
カズはピッチに 不死鳥よ(上) 2005/07/26  
ソフト・ターゲット 2005/07/22  
野球は文化か 2005/07/17  
ネポティズムという宿痾 2005/07/14  
情報源の秘匿 2005/07/12  
暴力の連鎖 2005/07/08  
オイルショック再び? 2005/07/06  
公団、天下り、談合 2005/07/02  
骨太と鉄面皮 2005/06/30  
”らしくない”人々 2005/06/25  
貪欲なるストライカー 2005/06/23  
「金時持ち」遥か 2005/06/19  
家族の絆 2005/06/16  
総中流の幻想 2005/06/12  
宮本という名作 ドイツ切符(下) 2005/06/10  
ジーコの意地 ドイツ切符(上) 2005/06/09  
”W杯”ゴール目前 2005/06/04  
綿々、技の伝承 2005/06/02  
蓮池薫さんのライフワーク 2005/05/29  
病診連携 2005/05/26  
破壊の行き着く先 2005/05/21  
戦争の下請け化 2005/05/19  
デビッド・リーンが描いたもの 2005/05/15  
情報過疎の戦場 2005/05/12  
徳富蘇峰と文学の森 2005/05/08  
力士・片山の夏 2005/05/05  
三島由紀夫の小遣い帳 2005/05/03  
田中一村 植物を描き尽くす 2005/05/01  
融和する美-花の不思議 2005/04/29  
男のスーツ 2005/04/27  
M&A劇場-額に汗する者は 2005/04/24  
M&A劇場-従業員さまいずこ 2005/04/22  
M&A劇場-団塊の観客たち 2005/04/20  
「舞姫をたどる」 2005/04/17  
異文化同化 2005/04/14  
“聖地” の憂鬱 2005/04/10  
フットボール 日独の紐帯 2005/04/07  
水の風景 2005/04/02  
内なる国際化 2005/03/31  
「方言万歳」 2005/03/26  
「万博 35年後」 2005/03/21  
「万博 35年前」 2005/03/20  
伝説の豪腕-持続する志 2005/03/17  
適材適所 2005/03/13  
球春来たる 2005/03/10  
スターの染み入る言葉 2005/03/06  
「父」の崩壊 2005/03/03  
大いなる二番手 2005/03/01  
黒はんぺん賛歌 2005/02/26  
「情」と「効率」 2005/02/23  
ベビー81 2005/02/19  
17歳の閉塞 2005/02/16  
信用無用 2005/02/12  
ヒーローは燃え尽きない 2005/02/10  
はとバスご一行様御成り 2005/02/06  
楽天的野球論 2005/02/02