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2006年「Webコラム一灯」

 「9.11」の残像

2006/09/11

  米上院情報特別委員会が、イラク戦争をめぐるブッシュ政権の情報活動に関する報告書を公表し、この中で旧フセイン政権と国際テロ組織アルカイダの結び付きを完全に否定した-という外信記事が目を引きました。対イラクの“開戦の大義”を、国際テロ組織との戦いだとしてきた大統領の主張を、議会が真っ向から覆したのですから衝撃です。


   5年前の記憶がよみがえります。夜、いつものようにテレビニュースを見ていました。飛び込んできたのは、旅客機がビルに突っ込んでゆくシーンでした。米国という超巨大国家を標的にした同時テロは、まさに“戦争”の始まりでした。繰り返し流れる映像は、市民だれもが遭遇する可能性のある“戦場”を映し出していたのです。人間が起こすはずのない、起こしてはならない蛮行が、まるで同時進行のドラマのごとくに世界に流れたのでした。あの日から、市民生活の日常が明らかに変質しました。好戦的な空気の漂う社会では、不信、疑念、憎悪がそこかしこに渦巻いています。残虐な非日常が当たり前になってしまったのです。


  中東の衛星テレビ、アルジャジーラは、アルカイダの指導者ウサマ・ビン・ラディン容疑者や同時テロに関与した人物が写った映像を放送しました。古い時期のものとみられますが、テロリスト集団が今これを公開する意図は明白で、再度のテロの恐怖を“宣伝”することです。先に英国で摘発された飛行機空中爆破計画などと併せ、闇に蠢く邪悪な意志は、人々の生命を狙っているのです。


  テロの温床とされるアフガニスタンへの攻撃から、フセイン打倒のイラク戦争まで当初の軍事作戦の成果は、既に灰燼に帰したようです。アフガンではタリバンが息を吹き返し、イラクでは治安は回復せず混迷が続いています。欧米からフィリピン、インドネシアなどアジアへもテロは拡散しています。遠い世界の事件のごとくにみられてきた“21世紀の局地戦”は、空港での手荷物検査の厳格化など、日本の市民にも影響します。その意味では、一国平和主義は幻想となり、否応なく「世界市民」化せざるを得ないのです。


  陸上自衛隊が活動していたイラク南部サマワに建設され2年前に爆破された日本との友好記念碑に、イスラム教シーア派反米指導者の肖像の大看板が掲げられたそうです。人道的な国際貢献の象徴であった復興支援活動の趣旨が踏みにじられた思いです。一方で、混乱の極から抜け出せない住民の焦燥が背景にあるようにも想像します。


  米議会の報告書は、軍事作戦を正当化するための情報操作の可能性をにじませています。同時テロが世界に撒き散らしたのは、憎悪と不信です。その克服は並大抵のことではありません。銃弾で消滅させることのできないものです。血に飢えた暴力信奉者をあぶり出し、締め出すことしかありません。一朝一夕ではかなわない、この息長い戦いを想像すると、悄然とするのです。 

(鮟鱇)




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